サモナー、少しだけ強くなる
「おーい。生きてるかーい」
急変した状況に思考が硬直してしまっていた。そんな俺の耳に、やけに高い声が届く。その声はさっき、内から伝わってきたものと全く同じだった。
久しぶりに推理とでも洒落こんでみる。この場にいるのは俺と地面にのしている三人の男と、多分龍だと思われる生命体。なんだろう、背中から生える白銀の翼。体から突き出る二本の腕に二本の足。どちらも先には鋭い爪が付いている。そして短めの首があり、そこに流曲線を描いた頭がある。眼の鋭さに思わずちびりそうになる。いまにも滅びのバーストストリームでも撃ちそうないでたちなのに、サイズは俺の半分くらいしかない。なんちゅうギャップや。
推理に戻ろう。この場にいる人間、または生命体で、声を発することが出来る可能性があるのは、まず俺。そして、この龍しかいない。ということは?
「お前が喋ってんの!?」
「当たり前だよー」
確かに口が動いている。なんだこの容姿と口調のギャップは。
「僕がこいつら倒したんだからね」
頭の角度を少しあげて、ただでさえ細い目をさらに細める。そんなにどやどやすんなっての。
「おい龍」
「僕にはピグーっていう立派な名前があるの」
なんつう間抜けな名前だよ。
「よーしわかったピグー。お前は何者だ」
「んーとねー、この世界で考えると、三番目に近い世界の住人」
わけがわからん。
「なになにその顔は」
「えーっと、ピグーも異世界の人ってこと?」
「人じゃないけどそうだよ」
「境遇的にはおれと一緒?」
「一緒のようでぜんぜん違うかな。僕はユースケの意思で世界を行き来できる。でもユースケは条件を満たさないとこの世界から動くことができない」
色々聞きたいことはあるけど、
「なんでお前は俺の名前知ってんねん」
「そこかい!」
ツッコミはどの生物にも共通らしい。
「条件ってなんだ」
この問いに少し思案するような様子を見せる。しばしの静寂があったあとピグーは口を開いた。
「その条件の内に魔王の消滅が入っているってことは確実だね」
「そんな言い方をするってことは?」
「他にも条件があるかもしれない。ないかもしれない。そこまでは僕には視えないや」
「そっか」
異世界に来てからすでに五時間。日もすでに暮れかかっている。俺にも信じられないくらい展開の早く濃密な五時間だった。
別にこの龍の言葉を百パーセント信用しているわけではないが、もしかすると元の世界に帰れるというのは心の支えになる。魔王を倒すと元の世界に帰れるなんてのもどこかにありそうな話だしな。
まあ、そんなこんなで、俺のちっぽけな異世界生活は幕を開けた。
「ラーメン食いてぇええええええええええええええ!」
展開の早さと更新の遅さは重々承知しておりますはたたたです。お気に入りに入れて下さった方がいるようで、なんとも嬉しい気持ちになったりしてます。これからも本作をよろしくおねがします。