第一章 『波乱』
《如月ノ南方、弥生ニテ、王家双方ノ血ト呪ガ交ジリアウ時、世ニ災イヲ齎ス妖ガ目覚メル―》
「起きてくださいっ姫ッ―」
「んん…ッ」
蜜柑がゆっくりと瞼を持ち上げると、そこには亜麻色の髪の毛をした青年―浅緋が立っている。蜜柑は浅緋の声で渋々体を起こした。
浅緋「おはようございます、姫。」
蜜柑「…ん、おはよ、浅緋。」
蜜柑は鮮やかな夕焼け色の髪の毛を揺らし、浅緋に微笑んでみせた。
そう、浅緋が言っているように蜜柑はここ、如月国の姫で、浅緋は蜜柑の用心棒なのである。
2人が挨拶を交わした後、蜜柑は薄い桃色の着物にきがえた。その後、しばらくしてから部屋の襖が開いた。
振り返ると、茶髪をした王子の火樽と火樽の用心棒の柊が立っている。
火樽「おはよう、蜜柑。」
蜜柑「おはよう、火樽ッ。」
皆はそれぞれ挨拶を交わした後、部屋を出ていった。
―浅緋たちがいる国、如月国は大陸の北方にある。
そして、4人がいるのは王家の者が住む屋敷。
この屋敷はかなり広く、敷地の3分の1を占める大きな庭がある。
4人は雑談をしながら庭の見える長い廊下を歩いていた。
―そのとき。
突然、“ドオーーーンッッッ!!!”というすごい音が屋敷中に響いた。
慌てて庭をみると、そこからは煙が上がっていた。
蜜柑「なっ何!!?」
柊「しっ!…誰か、いる。」
4人はじっと庭を見つめていた。するとしばらくして、
「すみませんねえ、庭を壊してしまって。」
という声と共に金髪の背の高い若い男が姿を見せた。
浅緋は刀を、柊は双剣をそれぞれ構え、蜜柑と火樽をかばう態勢をとる。
火樽「貴方は誰ですか?」
??「俺ですか?俺は柳。はじめまして、蜜柑姫、火樽王子。」
柊「用件は何だ?」
柳「フンッ、そりゃあもちろん…姫と王子を渡せぇぇぇっっ!!!」
浅緋は斬りかかってきた柳の刀を受け止め、柳を睨みつけた。
柊も双剣を持つ手に力をこめ、柳を睨みつける。柊の短く切られた黒髪が風になびく。
柳「お前ら…俺と戦おうってのか?おすすめはしないぜ?」
浅緋「俺等は用心棒だっ!!戦うに決まっているだろう!?」
柊「私も同感だな。だが、浅緋。こいつは今までのヤツとは違う。…まずい気配がする。……気をつけろよ。」
浅緋「あぁ。分かってる。…行くぜっっ―!!!」
浅緋と柊は同時に斬りかかった。
…しかし、気がついた時には全てが終わっていた―。
2人が斬りかかったときには柳はもうそこにはおらず、2人の背後に回り込んでいた。
そして、柳は2人を斬り、姫と王子を連れて去って行った。
…一瞬の出来事だった。
―浅緋は体を起こして周りを見渡した。
柊「気がついたか?」
浅緋「…ひ…柊っ」
柊は腕を組んで壁に体を預けていた。
浅緋「…ここは?」
柊「おそらく、蔵の中だ。」
浅緋「蔵?」
柊「あぁ。さっきいろいろ試してみたんだが…扉があかないんだ。閉じ込められたらしいな。」
浅緋「そう…か。」
柊「…ところで、何を持っているんだ?」
浅緋「ん…?」
浅緋はその時初めて、自分が何か持っていることに気がついた。
浅緋「なっ…何だろ??」
浅緋が持っていたのは紙の切れ端。
その紙にはかすれた文字が書かれている。
浅緋は途切れ途切れのその文字を読み上げた。
浅緋「《如月…南…弥生ニ…王…ガ…交…ウ時…災…ヲ…メル―》―っっ??」
柊「そッ…それは―」
??「《王家ノ妖伝》…ね」
2人「!!?」
2人は声のした方をふりかえった。
そこには栗毛をした女性―王家に仕えている侍女のリーダーの朱音が立っている。
浅緋「あっ…朱音…いつのまに…」
朱音「浅緋君、柊君、こんな所にいたのね。姫と王子がさらわれた、って屋敷中大騒ぎよ?」
2人「……。」
浅緋と柊は静かに俯いた。
朱音はそんな2人に構わず話を続ける。
朱音「ところで、何でこんな所に《王家ノ妖伝》があるの?」
柊「分からない。そう言えば前に王子から《王家ノ妖伝》の話を聞いたことがある。」
浅緋「どんな話なんだ??」
柊「えぇ…たしか…―」
柊は浅緋に《王家ノ妖伝》の話を語った。
柊「昔、如月国周辺の国が次々と恐ろしい妖怪に襲われたことがあったんだ。襲われた国は数時間もたたないうちに滅ぼされたらしい。その妖怪はとても強く、人がかなうような相手ではなかったそうだ。そこで、人々は如月国から妖怪を遠ざけるために南へ、南へと妖怪を追いやった。そして、南の端の方にある弥生国まで追いやった時、その時の如月国の王子と姫が自分たちの命と引き換えに妖怪を封印したらしい。その後、王家の後継者がその名誉をたたえ、次世代まで語り継ごうと、その時起こった出来事や封印・封印解放などの方法をつづり、屋敷の地下深くに封印したんだ。それが《王家ノ妖伝》だ。」
長くなって悪かったな、と柊が苦笑する。
浅緋「すげー!詳しいな、柊。」
柊「あぁ。全て王子に聞いた話だがな。朱音もこの話知っているだろう?」
朱音「えぇ。姫様が話してくださったわ。」
浅緋「聞いてないの俺だけかよっ!」
3人は少しの間だけ笑顔を見せあった。
しかし、すぐに真剣な顔に戻り、話を続けた。
朱音「でも…《王家ノ妖伝》は今も地下に封印されているはずなのに、どうして…」
浅緋「まさか、さっきの『柳』ってやつは妖怪復活が目的で2人を…?」
柊「…有り得るな。」
朱音「それは誰?」
浅緋「2人をさらったやつだ。」
朱音「なるほど。それなら有り得るわね。とりあえず、ここにいても仕方ないわ。行きましょ。」
柊「行く、とは…?」
朱音「…2人を…助けに行くんでしょ?」
柊「…あぁ―。」
浅緋と柊は微笑み、朱音のあとに続いて蔵を出た。
こんにちは、はじめまして!《POPCORN》と申します(*^^)
この『浅緋刀妖伝』は私が初めて書いた作品です★
《ちなみに、“あさひかたなようでん”って読みます!》
誤字、脱字や表現がおかしいところがあったらすみません<(_ _)>
何か意見やアドバイスがあればどんどん書いてください!!
これからの参考にさせていただきます☆
がんばって書いていこうと思いますので、温かく見守ってください!!
では、失礼します(^^