第3話―2 キラキラ☆ギャルのコリンちゃん
キラキラ☆ギャルは部室に入ってきた瞬間、そこに異物がいることに気がついた。さえない女とさえない男が並んで座っている。どちらも彼女にとって見覚えのない顔だった。
特に女の方を一瞬ギロリと睨みつけたが、すぐにその顔を取り繕ってニコリと笑う。誰が相手だろうと外面は保っておくべきだ。先輩の知り合いならばなおのこと。それでさっと弥幸に向き直り、問いかけた。
「あれ~、みゆきせんぱ〜い、お知り合いですか〜?」
「ああ、うん。土曜日にね、このふたりと心霊スポット探索に行ってきたんだよ」弥幸はニコニコ笑いながらそう言った。
ああ、なんてまばゆい笑顔。目がつぶれてしまう、と思いながら、彼女はふたりの方に目を向ける。やっぱりさえない女と男だ。あの美しいお顔を見たあとでは尚更だった。
でも――いっしょに心霊スポットだと?いったい弥幸とどんな関係なのか⋯⋯
「神谷円さんと有明省吾くん、どちらも君と同じ1年生だよ」と弥幸。そしてふたりに向き直って続ける。「ああ、この子がね、たくさん入ってくれた新入部員のひとり、和道凛子さんね」
紹介されて軽く頭を下げながら、聞こえるか聞こえないかくらいの声で「ども」とだけ言う円。省吾は姿勢を正して「よろしくお願いします」と丁寧に礼をした。しかし凛子はそんなのは無視して弥幸に抗議する。
「ちょっとみゆきせんぱ〜い、フルネームはやめてくださいよお」本気の抗議ではあるが、弥幸に対して甘えた声は絶対に崩さない。「私のことはコ・リ・ンでお願いしますって、何回も言ったじゃないですかあ」
「ああ、そうだったね、ごめんごめん」弥幸は照れたような笑みを浮かべる。「こちらコリンちゃん。ふたりともよろしくね」
まだ「ちゃん」が付いているのが不満だったが、とりあえずいまはこれでよしとした。この距離をこれから縮めていくのが、弥幸と出会った瞬間からの凛子の野望だった。それにしても――
「いっしょに心霊スポットって、おふたりとも以前からお知り合いなんですか〜?」
「ああ、それなんだけどね、ほんとすごかったんだよぉ。このふたりね⋯⋯」
弥幸はそこからものすごいテンションで事の顛末を語り出した。子どもの幽霊の件など、怖いものが苦手な凛子にとっては、耳をふさぎたくなるような話だったが、なんとか笑みを維持して相づちを打った。
「――というわけで、ふたりとも実に得難い人材なんだよ。僕としてはオカ研に入部してほしいんだけどなあ。ねえ、コリンちゃんもいっしょに勧誘してよ」弥幸は無邪気に言った。
「ああ、はい、ほんと、すごいですね⋯⋯」苦笑いで受ける凛子。
話を聞いて警戒感がグッと高まっていた。チョップがどうこうのあたりはとても信じられたものではないが、このふたり、特に円の方が弥幸と親和性が高いのは間違いないだろう。見た目はどうということのない相手だが、少し変わったところのある弥幸である。コロッといかないとも限らない。
それにしても⋯⋯心霊スポットか⋯⋯。円と対抗するつもりなら、自分も弥幸と共にそこへ行くしかあるまい。しかし、凛子はほんとうにその手のものがダメなのだ。いっしょに行ったらどのような醜態をさらすことになるか、想像するだけで身の毛がよだつ。
だが、それでも――凛子は拳をギュッと握り、声の震えをどうにか抑えて言った。
「みゆきせんぱ〜い、そんなとこ行くなら私も連れてってくださいよ〜。私これでも部員なんですよ〜」
「えー、だってコリンちゃん怖いの苦手だって⋯⋯」
「だから克服したいって、入部動機で言ったじゃないですか〜」そんなつもりは全然なかったが、もうこうなったら行くとこまで行くしかない。凛子は覚悟を決めた。
「ほんとに〜?いやあ嬉しいなあ。こんなに熱心に活動してくれるなんて」弥幸は心の底から喜んでいる。まばゆい笑顔をさらに輝かせた。
ああ、この笑顔が見れるなら、私はなんだってやってやる、と凛子は決意した。
「じゃあせっかくだからさ、今夜さっそく行ってみない?みんなで心霊スポット」
「えっ⋯⋯」凛子はあまりに急な提案に思わず真顔で絶句したのだった。




