第3話―1 キラキラ☆ギャル、空手バカに戸惑う
「なんかごめんね〜。後ろちょっと狭いでしょう」三浦弥幸は軽快な声で呼びかけた。
「ぜんぜんそんなことないです〜。快適で〜す」キラキラ☆ギャルが目の前の運転席に張り付くようにして甘えた声を出した。
「そお?ならよかった。でも楽しいよね〜。みんなでドライブ。大学生って感じするね〜」
「ですよね~。私いつでも付き合いますから。どんどん誘ってくださ〜い」キラキラ☆ギャルはアピールに余念がない。
神谷円はそんなやりとりを聞きながら、誰にも聞こえないように、密かにため息をついた。
(なんだってこんなことに⋯⋯)
円は内心頭を抱えていた。よりにもよってこんな、自分がもっとも苦手とする人種と行動を共にするだなんて。やはりオカ研の部室へなど行くべきじゃなかった、と後悔していた。
いまは夜の21時を回ったところ。ところはオカ研会長・三浦弥幸の軽四駆の中。運転席に弥幸、助手席に省吾、後部座席に円とキラキラ☆ギャルが並んで座っていた。
「有明くんはどう?楽しんでる?なんかさっきから黙ってるけど」言いながら横目で助手席を確認する弥幸。「あれ、もしかしていま、筋トレしてる?」
ああ、あれか、と円は思った。この有明省吾という男、無類の空手バカである。時間があればいつでも空手のためのトレーニングを開始する。いまも真っ赤な顔で、力の限り合掌しているのだろう。
「ああ、はい」省吾は少し時間を置いてようやく返事をした。
「さすが有明くんだなあ。僕も見習わないとなあ」どこに感心したのか、弥幸もやはり少しズレている。
「いや〜、みゆき先輩はこんなの見習わないでくださいよ〜」キラキラ☆ギャルは明るくツッコミを入れる。
「普通他人の車の中で筋トレとかしないから」これは省吾に向かって。冗談めかしてのようで、露骨に険があった。
だが、省吾はまったく気にしていない。おもむろに背後に座る円に声をかけてきた。
「神谷さん、ちょっとシートを倒してもいいですか?」
円は瞬時に理解する。やはりあれもやるつもりなのか。なんてブレないヤツだともはや感心してしまう。
「ああ、はいはい。いいよいいよ、大丈夫だから倒しなよ」
「ありがとうございます」省吾は嬉しそうに笑って礼を言い、シートを倒す。
「は?なにすんの?え?寝るの?」困惑するキラキラ☆ギャル。
省吾は前回と同じく、シートにお尻の部分以外をほんの僅かに浮かせて横になった。そのままの姿勢を限界までキープする。
「は?筋トレ?なんでよ?」キラキラ☆ギャルはもうなにがなんだかわからないといった様子だ。
「ハハハハハ、さすが有明くんだなあ」朗らかに笑う弥幸。
円も横のキラキラ☆ギャルの反応が可笑しくて、つい声を出して笑いそうになった。しかし、グッと腹に力を込めてそれをこらえる。いま、省吾だけでなく、円の腹筋も鍛えられていた。




