第2話―エピローグ
「おそらくあれは、あのトンネルに迷い込んできた浮遊霊ではないかと、僕は思うんだよね」
弥幸は昨日終日動画を繰り返し見て検討したという自説を披露していた。それを並んで座って傾聴している円と省吾。
いまは週があけて月曜日、昼休みが終わり、そろそろ3限目が始まるかという時間帯である。今日も円と省吾がいつもの通り、3号館2階の空き教室でお昼を過ごしていると、交換していたLINEに弥幸からメッセージが届いた。それは、トンネルでの体験について話しをしたいから部室に遊びにこないか、というお誘いだった。
もちろん円はあまり気が進まなかったが、先輩の誘いを波風立てずに断る方法を知らなかった。それで自分と同じく3コマ目があいていた省吾と連れ立って、オカ研の部室を訪れたのだった。ちなみに円はこれが初の、家族以外、義務的な連絡用以外の、純粋な ”個人“ とのLINE交換だった。
幸い部室には弥幸しかおらず、人見知りの円はホッと胸を撫でおろした。弥幸はあたたかく出迎えてくれて、飲み物やお茶請けなど、あれこれマメに用意した。そして全員が席に落ち着いたところで、話し始めたのだった。
「浮遊霊、ですか?」円はいまだ慣れない弥幸に、おずおずと尋ねた。
「そう、浮遊霊。誰かについてきたのか、風に流されてなのかは知らないけど、ふわふわと漂ってきたものが、あの場の磁場というか、怨念というか、そういったものに捕らえられたんじゃないかな」
「そういうことってあるんですか?」省吾が尋ねる。
「さあ?」弥幸は悪びれることなく言い、ニコっと笑う。「あくまで僕の考えだよ。実際どうかなんて確かめようがないしね。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。こういうのをあれこれ話し合うのもオカルトの楽しさだよね。ま、でも、あの影そのものからは嫌な感じしなかったんでしょ?」
「はい。嫌な感じだったのはあの黒い塊と繋がっていた、モヤモヤの紐だけです」省吾が答える。
「そのモヤモヤがあの子をあの場所に縛りつけていたんだろうね。それで来訪者は子どもの幽霊を目撃した、と。まあそんなとこでしょ」弥幸は自分の出した結論に満足気だ。「しかしあれだね、そのモヤモヤを、有明くんのチョップでスパッ、だからねえ。たいしたもんだよ。僕はずっとスマホの画面で見てたからね。あれは ”気“ かなんかの作用なの?」
「いえ、空手にそういう ”気“ とかないですよ」省吾はそう断って、以前円にしたのと同じ説明を始める。
円はその様子をぼんやりと眺めながら考えていた。はたしてあれであの子どもの霊は成仏できたのだろうか?たしかにあの時は清々しい気持ちになったけど、実際のところはどうだかわからないのだ。あの廃ホテルの幽霊だってそうだ。あの後どうなってしまったんだろう?
そのように物思いにふけっていた時、部室のドアがノックされた。円はビクッと過剰に反応し、とっさに身を隠せる場所を探す。しかし初めての場所でそんなところが見つかるはずもなかった。
「は~い、どうぞ~」弥幸は軽い声で返事をする。
するとドアが開くと同時に甘い猫なで声が耳に飛び込んできた。
「みゆきせ〜んぱ〜い、もうお昼食べました〜?」
やってきたのは、なにやらカワイイもので全身をゴテゴテと飾り立てた(と円には映る)、目鼻パッチリのキラキラ☆ギャル?だった。
第2話 了
あとがき
ここまで読んでいただきまして誠にありがとうございます。
今回新キャラも加わりまして、登場人物たちのやり取りも少しだけ厚みが増したかもしれません。もしかしたらそんなのは気のせいかもしれません。さあどっちでしょう。まあともかく、そして次回さらなる強敵がッ!という引きで終わりました。どうなることか乞うご期待!ってことで。
あと今回出てきた「空手に先手なし」という言葉はこの物語の倫理規定でもあります。オバケ相手だからといって、むやみに攻撃はしないということですね。
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