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空手バカ一代と行く、JDまどかの心霊探索ツアー  作者: AKTY
第2話 イケメンチャラ男と急接近!? オカ女、惑う ―旧道の古トンネル編―

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第2話―5 再びエンカウント!

「あっ、やっぱりか」まどかはやにわに立ち止まって、そう呟いた。


 さっき追い抜かれてから少し登って、ほどなく目的地というところ、離合用だろう少し広く取られたスペースに、自動車が止まっていた。


 省吾しょうごがなにも言わずに円の前に出る。その背中からビンビンに警戒している雰囲気が感じられた。円は省吾の肩越しに、首を伸ばして車の様子を観察した。


 自分たち以外の訪問者と遭遇することは、円がもっとも危惧していた事態だが、意外にもあまり動揺していなかった。たぶんそれは、目の前に立つこの男のおかげだろう。車の中でも鍛錬を欠かさず、熊にすらいつかは勝とうと思っている、本物の空手バカ。これまで様々な奇行を見せられたが、それがこういった場面での信頼感を築いてもいたのだ。


 慎重に、少しずつ距離を縮めていく。大きな車ではない。おそらくは軽四駆。円が免許取得後に購入を検討した中に、似たようなのがあったはず。結局ひとり暮らしと天秤にかけて諦めたのだが。とにかく大人数に襲われるということはないだろう。


 すると運転席のドアが静かに開いた。中から降りてきた人影がふたりに向かって手を振る。ヤンキー、浮浪者、反社会的組織の類ではなさそうだ。円はホッと息をつく。しかし省吾はというと、まだ完全には警戒を解いていないようだ。懐中電灯の光を直接相手に照射する。


 光の中に浮かび上がってきたのは若い男性。まぶしいのだろう、目の上に手でひさしを作っている。その男性はそのままふたりの方へ歩いてきた。口元は微笑んでいる。こんな急にライトを当てられても気分を害してはいないようだった。


「どうもどうも、いやあ人間だったかあ。オバケがいたと思ってドキドキしちゃったよ」人けのないこの場所でやけに澄んで響く、社交的な声。


 省吾もようやく警戒を解いたのか、懐中電灯を下げる。自分たちのほんの数歩前まで来た男性の顔を確認して、円は「あっ」と声をあげた。そこにいたのは先日、円に爽やかに話しかけてくれた、あのイケメンチャラ男だったのだ。


「あれ?君たしか⋯⋯大学のコンビニで会ったよね?」チャラ男は気さくにそう尋ねる。


「ああ⋯⋯はい、その節はどうも⋯⋯」円は緊張してうまく言葉が出ない。あの時と同じような愛想笑いを浮かべ、脇の下に嫌な汗をかいていた。


「お知り合いですか?」と省吾が怪訝そうに円を見る。


「ああ、うん、ちょっとね」と円。


「この前少しお話したんだよね?」チャラ男はそう言って、省吾にも笑顔を向ける。「ところで、もしかして、というかそれ以外ないだろうけど、トンネル見に来たの?」


「はい、幽霊が出るという噂があるそうなんで」省吾が答えた。


「ふ~ん、君たち、1年生だよね?うちのサークルに入ってたりしないよね?超常現象研究会、通称オカ研で学内では通ってるんだけど」


 言われてみれば――円は思い出す。そういえばあの新入生ガイダンスの日、チャラい勧誘をしてた中に、このオニーサンがいたような気がする。


「いえ、サークルには入ってません」これも省吾。


 円はまったく話さない。完全に萎縮してしまっていた。一応しゃべろうとはしていたのだが、やはりイケメンチャラ男のオーラは円には刺激が強すぎた。思ったことが言葉になって出てこなかった。


「あー、そうか。君たちみたいに積極的に心霊スポットに突撃するような子が入部してくれると嬉しいんだけどな」イケメンチャラ男はそう言って、眉を寄せる。「なんでかわかんないんだけど、今年入部してくれた子たち、あんまり真面目に活動してくれないんだよねえ。飲み会とか、最初の大人数での探索には来てくれたんだけどさ」


 いやいや、それはあんな勧誘してたらそうなるでしょ、と円は心の中でツッコんだ。たぶん入部したのはこの人や、他のオニーサン、オネーサン目当て。チャラいエンジョイ系サークルと思ってだろう。自分のようなオカルトガチ勢が近づくとは思えない。


 「僕らの代は部員が少なくてさ、あとは女の子がもうひとりだけなんだよね。だから今年は勧誘がんばって、数だけはたくさん入ってくれたんだけど⋯⋯」


 ん?もうひとりだけ?円は内心首をかしげる。じゃああの時たくさんいたキラキラした集団はなんなのだろうか?――気になる、気になる――円の尋ねたい欲求が、イケメンチャラ男オーラと鍔迫り合いしていた。


「あ、あの⋯⋯」か細い声がかろうじて円の口から出てきた。「か、勧誘していらっしゃった時って⋯⋯その⋯⋯いっぱい人、いませんでしたか?」


 イケメンチャラ男はその問いに優しい笑顔を向ける。ま、まぶしい、円の目が潰れてしまう。


「あの時見ててくれたんだ。そうそう、僕らだけだと人数少なくて辛気くさいかと思ってね、友だちに助っ人にきてもらったんだよね」


 明るく楽しいオカルトの正体はこれだったのか、と円は合点がいった。先輩、それ絶対逆効果だよ、と一瞬思ったが、それでとにかく人数だけは集まったのなら、戦略としては間違っていなかったのかもしれない。

 

「今日はおひとりなんですか?」省吾が聞く。


「そうそう、もうひとりの子はこういう探索系?じゃないんだよね。もっと怪談収集とかそっち系で。だから心霊スポットはたいていひとりで来てるよ」


 そして彼は少し考えるような仕草をして、恥ずかしそうにこう言った。


「僕ね、どうしても幽霊を見てみたいんだよね」


  



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