第2話―2 省吾の見解
「結局さあ、あれってなんだったの?漫画とかでよくある ”気“ みたいな?」
「いえ、 ”気“ とかそういうので相手を吹っ飛ばすとか、そんな便利なものないですよ」
「そうなの?でも中国拳法の達人かなんかが ”気“ で相手を操る、みたいなのどこかで見た覚えあるよ。その、たん⋯⋯とう、とかいうのも中国拳法からのなんでしょ?」
「たしかに站椿は ”気を練る“ 鍛錬だと言われますけど、私はそのようには捉えていません。というか ”気“ というものがよくわかりません」
「そんなにずっとやっててもわかんないものなの?」
「私は空手は力学だと考えています。魔法のような破壊力を持った一撃を放つ高段者はたしかにいらっしゃいますが、それは力学的に最適化された動きから生じるものだと思います」
「ふ~ん。じゃあその、いまやってるのも、別に幽霊やっつけたのとは関係ないんだね」
「関係があるかないかはわかりませんが、これは前にも言った通り、立つことを知るためです。この地球で私が ”立つ“ こと、それをわかりたいと思っています」
やっぱりいくら話しても円にはさっぱりわからなかった。地球とか言い出したよこの人、と内心かなりドン引きしていた。でも顔には出さない。なぜなら、彼――有明省吾はこの大学にいる円の唯一の友だちだから。
円はコンビニでの出来事のあと、自動機械のままふらふらと、ここ3号館2階の空き教室へやってきた。中の様子を伺うこともなく、フルオートで扉を開けると、そこにはいつものように站椿をしている省吾がいた。円はその姿を目にして、ようやく正気に戻ったのだった。
それで机に自宅で作ってきたおにぎりを並べ、それをもぐもぐやりながら、先ほどの会話を交わしていたのだ。ちなみにカップみそ汁はやはりおにぎりによく合った。それがあるだけで昼食のグレードがずいぶんアップしたように感じていた。
「ああそうだ、そういえば次はどこに行こうか。有名どころで行ってみたいところいっぱいあるんだよねえ」円は難しい省吾の話はとりあえず置いとくことにした。
「私はよくわかりませんから、どこでも行きますよ」
「なんならちょっと遠出してもいいよ。レンタカーでも借りてさ」
「え、神谷さん運転免許持ってるんですか?」省吾はとても驚いたようで、めずらしく円の方を見て尋ねた。
フフンと、円は得意そうに鼻を鳴らす。
「私はね、心霊スポット巡りをするために、大学決まったら速攻で自動車の免許取りにいったんだよ。免許取ってからも、お父さんに付き合ってもらっていっぱい練習したからね。車の運転にはちょっとばかり自信があるよ」
円がこんなに自信を持てるものが、オカルト関係意外にあることは本当に意外だが、人の良い省吾は心底感心しているようだった。
「へえぇ、すごいですね。私はどうも自分がああいう大きなものを動かすということに自信持てなくて」
「大丈夫、慣れだよ慣れ。なんなら私が教えてあげてもいいよ」
省吾の態度に気をよくした円は、先ほどのコンビニでの失敗もすっかり忘れ去って、その日一日を上機嫌に過ごしたのだった。




