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空手バカ一代と行く、JDまどかの心霊探索ツアー  作者: AKTY
第1話 初遭遇!? 空手バカとオカルト女子 ―峠の廃ホテル編―

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第1話―1 まどか、女子大生になる

 この春から晴れて花の女子大生となった神谷かみやまどかには、どうしても抑えきれない欲求があった。


 これはまだ幼い、たぶん小学校中学年頃から抱き続けているもの。歳を重ねるごとにその思いは強くなり、大学生になってついに限界ギリギリ、もう溢れ出さんばかりというところまできていた。


 なにせ自由気ままなひとり暮らしなのだ。自分の決断次第で、時間を選ばずどこにだって行ける。なんでもやれる。この願いをかなえることだって、きっとできるはず。

 

 そんな彼女の抑えきれない欲求、それは――


 幽霊を見てみたい!


 ――というものだった。


 子どもの頃からオカルトが大好きで、テレビの心霊特番は必ず録画して何度も見返した。ホラー映画、心霊映像集の類もヘビロテし、ホラー小説は読み漁り、ネット掲示板発の実話怪談系もぜんぶ網羅してきた。それらは彼女を心底震えあがらせたが、その一方で、もし自分がこの登場人物の立場になったらと、想像をたくましくしてきたのだ。そのドキドキはなによりも彼女の胸をときめかせた。


 もちろん心霊スポットにも行ってみたいとずっと思っていた。しかし円はその名に似合わず、あまり他人と縁を結べないたちだった。オバケには会いたいが、そういう場所にはもっと現実的な恐怖も存在しているという。ヤンキー、浮浪者、反社会的組織など、そういう人たちに、もし遭遇してしまったらと思うと、別の意味で震えあがる。ひとりで行くことなんて考えられない。どうしても最初の一歩目を踏み出せなかった。


 今度大学に進学して、円はこの永らく続いたボッチ状態から脱却しようと決意した。


 両親や親戚からいただいたお祝い金のほとんどすべてを注ぎ込み、服や化粧品を取り揃えた。着こなしやメイクの仕方はいとこのお姉ちゃんにご教授願い、これで完璧とまでは言わないが、少なくとも見苦しい見た目からは脱却できたはず。円は意気揚々と登校していったのである。


 入学して最初のガイダンスを受けるその日、あたりを見回して円は心のなかでガッツポーズした。ごく一部、自分では到底近寄りがたい綺羅びやかな女子大生もいるにはいるが、たいていは普通の身なり、自分とそう大差ない人たちだった。これなら自分が浮いてしまうこともあるまいと安堵し、自らを中の下という位置に格付けた。


 円にはある目標があった。それは大学でサークルに所属することだ。いままで通ってきた中学、高校と、オカルトや超常現象に関する部活はなかった。けれど、大学なら、あらゆる妙ちくりんなサークルが存在していると噂される大学ならば、きっとその手のサークルも在るに違いない。


 そこに所属して、みんなで心霊スポットへ行き、オバケに遭遇する。動画も取れるかもしれない。自分がそのレポートをしたためて、ネットで公開するのもいいだろう。それが大バズリして、実話怪談系ホラー作家として世に華々しくデビューする。そんな未来絵図も見えた。野心は際限なく広がっていく。


 大学構内はサークルの勧誘活動で盛況だった。運動部がそのあり余る体力に物を言わせて、片っ端から声をかけている。円はそれらとエンカウントしないよう、息を殺して人の群れの間を進んでいく。ここを早く突破して、文化系サークルを探さねば。


 そんな時、道着を身にまとった屈強な集団がやってきた。彼らはそそくさとビニールシートを敷くと、ブロックをふたつ置き、その上に瓦を積み重ねた。ひとり特に大柄な男性が進み出て、キエェェェと大げさな奇声を発すると、手刀をそこに叩きつける。瓦は最後の1、2枚を残して真っ二つに両断された。


 突然の催しに気を取られた円は、そのパフォーマンスを食い入るように見つめていた男子学生と衝突してしまう。ただ普通にぶつかっただけなのに、なぜか円は大きく跳ね飛ばされてしまった。その学生はまるでコンクリートの柱ででもあるかのようにビクともしなかった。


 男子学生はすぐに気づいて円に駆け寄ってきた。


「すいません。大丈夫ですか?」言いながら手を差し出す。


「はい、こちらこそすいません。よそ見してました」円はあたふたと挙動不審な動きで、なんとかそれだけ口にすると、その手を取らず、相手の顔もよく見ずにそそくさとその場を立ち去った。


 そんなトラブルもあったが、なんとか文化系サークルが集まっている区画までやってこれた。先ほどの喧騒とはうってかわり、そこは落ち着いたものだった。それぞれのサークルが掲げる看板から、自分と関係ありそうなものを探す。そしてついに、目当ての文字が目に入る。


 オカルト好き集まれ!

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 文面に従って、集まろうとした円。しかし、そこにいたのはオカルトという言葉からはほど遠い、キラキラおねーさん、チャラチャラおにーさんたちだった。


「オカルト系サークルで〜す。僕らといっしょに心霊スポット巡りしてみませんか?」軽い声でそう呼び込みをしている。「みんなで泊まりがけで合宿にも行きま〜す。明るく楽しい仲良しサークルで〜す」


 明るく楽しいオカルトってなんだよ!内心憤る円。ここは違う。ここは自分には無理だ、と踵を返し、他にはないかとうろつくも、それらしいのはそこだけだった。


 大学初日にして、円の野望はもろくも崩れ去ってしまったのだった⋯⋯




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