表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『昔やっていたテーブルトークRPGの世界に転生し、精霊に好かれるところから始めます』  作者: ゆふぉん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/82

第87話 未完成

世界樹の内側において、

時間はもはや直線ではなかった。


一日が一年に等しく、

一年が一瞬に圧縮される。


だが、ただ一つだけ確かなものがあった。


残り三ヶ月。


それは猶予ではない。

猶予に見せかけた、最後通告だった。


精霊女王・未完成


サラのステータスには、

確かにその文字が浮かんでいる。


《精霊女王》Lv5(不完全)


四精霊王と並び立つ資格は得た。

だが、支配も統合も、まだ出来ない。


命令すれば反発が起きる。

無理に力を引き出せば、精霊が砕ける。


――“王”ではあるが、

まだ“戴冠”していない。


世界樹は、はっきり告げていた。


『今のままでは、暗黒竜にも、暗曜帝国にも届かぬ』


一柱目――雷水神《ヴァル=ネレイオス》


最初の精霊神は、

戦いを許さなかった。


雷が落ちる前に、

水が世界を満たす。


攻撃ではない。

存在圧そのものが死を招く。


サラは精霊術を展開するが、

Lv5では“同調”が足りない。


四精霊王を同時に呼び出すことすらできず、

精霊たちは苦しげに唸る。


「……まだ、足りない……」


ユウトが前に出る。


剣を振るわない。

勇者スキルも使わない。


ただ、雷水の中で立ち続ける。


雷が身体を裂き、

水が肺を圧迫する。


二秒で死ぬ――

はずだった。


だが、大地の精霊王ベヒモスが、

無言で踏みとどまる。


三十秒。


それだけで、限界だった。


雷水神が、初めて興味を示す。


『……人と精霊が、ここまで耐えるか』


それは勝利ではない。


**「生存の認可」**だった。


二柱目――爆炎神《グラ=イグニス》


次は、完全な破壊。


ここでは、

精霊女王Lv5は無力だった。


炎を制御する前に、

世界が焼き切れる。


サラは悟る。


(……私が“王”だからじゃない)


(まだ、“女王として認められていない”)


精霊は従わない。

助けようとして、共に燃え尽きる。


ユウトが叫ぶ。


「サラ! 支配するな!」


「“願え”!!」


その言葉に、

サラは初めて膝をついた。


「……お願い」


命令ではない。

対等な祈り。


炎は止まらない。

だが――逸れた。


爆炎神が嗤う。


『まだ王ではない』


『だが、確かに“王になる器”だ』


これもまた、

通過許可に過ぎない。


三柱目――溶岩神《マグ=バルド》


最後の精霊神は、

“戦うこと”そのものを拒絶した。


大地が崩れ、

空間が裂ける。


ここでは、

精霊女王Lv5は役に立たない。


精霊神は言った。


『未完成の王よ』


『力を得る前に、何を失う覚悟だ』


サラは答えられなかった。


代わりに、ユウトが前へ出る。


風雷神の剣を、

地面に突き立てる。


「……俺が失う」


剣でも、魔法でもない。


責任を差し出す宣言。


溶岩神は、沈黙した。


『……人が、そこまで背負うか』


それ以上、攻撃はなかった。


三ヶ月の終わり


三体の精霊神は、

いずれも倒れていない。


だが、

ユウトとサラは、生きて立っていた。


世界樹が告げる。


『精霊女王:Lv5維持』


『完全解放には至らず』


『だが――資格は保持』


サラは、悔しそうに唇を噛む。


「……まだ、半分」


世界樹は、静かに続ける。


『残り三ヶ月』


『精霊女王をLv10へ』


『仲間を集めよ』


『一人では、この世界は守れぬ』


扉の奥で、

次の層が動き始めていた。


これは勝利ではない。


“敗北しなかった”だけの物語。


だが――

神話に挑む資格は、確かに得た。


次は、

逃げることすら許されない戦いが待っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ