第83話 精霊女王と風魔神の戦い
――神を討つのではない。神を“取り戻す”戦い
与えられた、、30秒、、この時間の闘いにサラは
精霊女王として、一歩前へ出た。
彼女の背後に、四つの巨大な影が立ち上がる。
炎の精霊王
水の精霊王
大地の精霊王
風の精霊王
四体が、初めて完全に一列に並ぶ。
それは前例のない光景だった。
精霊王は、本来、同時に全力を出さない。
世界の均衡が崩れるからだ。
だが今、均衡そのものが壊れかけている。
「――お願いするわ」
サラの声は、震えていない。
「最大出力で」
精霊王たちは、頷いた。
命令ではない。
合意だ。
四精霊王・連合極限解放
《エレメンタル・アポカリプス》
炎が天を焼き、
水が空間を断ち、
大地が世界を持ち上げ、
風がすべてを貫く。
単一属性ではない。
世界そのものを構成する四要素の、同時衝突。
光も闇も関係ない。
神か否かも関係ない。
それは――
「世界に在れ」と願う力。
直撃。
暴風神の中心が、初めて崩れた。
轟音。
光。
雷鳴。
そして――
「……っ!」
風魔神の中から、
黒い影が引き剥がされる。
闇の精霊王。
かつて、暴風神テンペストを呑み込んだ存在。
だが完全には離れない。
闇は、風魔神を鎖のように縛り付けている。
「……まだ、拘束されてる」
サラが歯を食いしばる。
その瞬間。
柔らかな光が、前に出た。
光の精霊王《ルミナ=エルディア》。
『我が相手をしよう』
光と闇が、正面から衝突する。
だが――
押されている。
闇の精霊王は、もはや単独ではない。
暴風神テンペストの経験と力を喰らい、増幅している。
数千年分の戦い。
神話時代の記憶。
それらすべてが、闇に上乗せされている。
『……強い』
光の精霊王が、苦しげに呟く
『経験値が、違う……』
その言葉に、ユウトの背筋が凍る。
(……経験値)
(神にも、成長がある……?)
その瞬間。
風魔神の中心から、声が漏れた。
『……やめろ……』
かすれた声。
破壊の咆哮ではない。
理性の声。
『……剣……』
ユウトが、はっとする。
『……その剣……』
風魔神の視線が、ユウトの手にあるものを捉えた。
精霊王の剣。
世界樹が認めた者の証。
『……精霊王の剣か……』
はっきりとした言葉。
『世界樹が……まだ……』
風魔神の中で、何かが“戻る”。
『……我は……』
『……暴風神テンペスト……』
闇が、悲鳴を上げる。
ユウトは、一歩踏み出した。
「……待ってたんだな」
テンペストが、ゆっくりとユウトを見る。
『……来たか……』
『精霊王の剣を持つ者よ……』
嵐の中ではっきりと告げられる。
『我を……』
『闇から、解放せよ』
世界樹の声が、重なった。
『――認めよう』
『そなたは、選ばれた者』
『解放せよ』
ユウトは、剣を強く握り締める。
倒す戦いじゃない。
これは――
神話を終わらせるための一撃だ。
サラが、横に並ぶ。
「……行こう、ユウト」
精霊女王と、勇者。
そして精霊王の剣。
神を殺すためではない。
神を――
神に戻すために。




