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『昔やっていたテーブルトークRPGの世界に転生し、精霊に好かれるところから始めます』  作者: ゆふぉん


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第七十三話 世界樹と、、

――世界樹の声


 扉の前に立った瞬間だった。


 空気が、変わった。


 重い、という言葉では足りない。

 圧力とも、威圧とも違う。


 それは――

 世界の基準そのものが切り替わった感覚だった。


 肺が、無意識に息を抑える。

 心臓が、一拍、遅れて脈を打つ。


 拒絶ではない。

 だが、軽々しく踏み込むことも許されない。


 ユウトは、自然と一歩、踏みとどまっていた。


 世界樹が告げていた。


 その時。


 世界が、静かに軋んだ。


 音ではない。

 空間そのものが、呼吸を変えたような感覚。


『――この先は今までと格が違う』


 声は、耳ではなく、意識に直接届いた。


 怒りも、慈悲もない。

 ただ、揺るがぬ事実を告げる声。


『二秒と、持たぬ』


 サラが、息を呑む。


 弓を握る指が、僅かに強張った。


『ユウトよ』


 名を呼ばれた瞬間、

 精霊王の剣が、静かに応えた。


 それは拒絶ではなく、

 世界樹が彼を認識している証だった。


『そなたは、人の子だ』


『ゆえに、寿命がある』


『ゆえに、スキルにも限界がある』


 否定ではない。

 断罪でもない。


 世界の前提条件。


『この層は、人の時間では測れぬ』


『ここでは、力だけでは足りぬ』


『覚悟と、意思と、積み重ねが要る』


 扉の向こうから、

 微かな音が漏れ出す。

 サラの風の指輪は淡く光


 遠雷。

 暴風。

 抑えきれぬ怒りの残響。


 生きた災厄が、そこに在る。


『だが――』


 世界樹の声が、わずかに低くなる。


『ここは、時間軸が歪む』


『世界の外縁に近いがゆえに』


『そなたらの時間は、引き延ばされる』


 ユウトは、静かに息を整えた。


『残り十ヶ月』


『この空間においては』


『十年に等しい』


 サラが、ゆっくりと顔を上げる。


「……十年分、戦えるということね」


 希望ではない。

 現実を受け止めた声だった。


『精霊王を伴い』


『毎日、戦え』


『逃げるな』


『妥協するな』


『人としての限界を』


『“越える準備”をせよ』


 ユウトは、拳を握り締めた。


 奇跡に頼る段階は、すでに過ぎている。

 六ゾロすら、この先では補助輪にすぎない。


『そして、サラ』


 名を呼ばれ、彼女は背筋を正す。


『そなたは、ハイエルフ』


『長命であるがゆえに、到達できる場所がある』


『精霊術・レベル10』


『弓術・レベル10』


 間を置かず、さらに告げられる。


『剣術••レベル10 セージ10』


 サラは一瞬だけ驚いたが、

 すぐに、迷いなく頷いた。


「……必要なら、やるわ」


『よい』


 世界樹の声が、わずかに緩む。


 次の瞬間。


 視界に、光が走った。


――経験値を付与します――


 数字が、奔流のように流れ込む。


 29 × 9999

 そして――

 世界樹の指輪による倍率補正 ×2


 膨大な経験値が、

 ユウトの内側へ注ぎ込まれる。


 身体が軋む。

 魂が、押し広げられる。


 だが、壊れない。


 世界樹が――

 意図的に支えていた。


『今の力では、世界は守れぬ』


 静かな断言。


『世界は、すでに破滅へ進み始めている』


 ユウトの思考が、わずかに揺れる。


「……何が、起きた?」


『そなたが知らぬ間にも』


『戦争が起きている』


『命は失われ』


『歯車は、止まらず回っている』


 淡々と告げられる現実。


『十ヶ月』


『その間、毎日』


『レベル十以上の存在と戦え』


『最終日』


『この扉の向こうにいる者を』


『解放せよ』


 封印された存在。


 倒す前に、挑む資格を得よという宣告。


 ユウトは、精霊王の剣を握り直した。


 震えはない。

 迷いもない。


「……世界に追いつけばいいんだな」


 サラが、小さく笑った。


「簡単じゃないけど……逃げ道もないわね」


 二人は、扉を見つめる。


 第百二十層。


 ここから先は、

 生き残るための戦いではない。


 世界を救う側に立つための戦いだ。


 扉の向こうで、

 嵐が、低く唸った。


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