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『昔やっていたテーブルトークRPGの世界に転生し、精霊に好かれるところから始めます』  作者: ゆふぉん


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第七十話 千年前――暗黒竜誕生の記録

 千年前。

 世界がまだ十八の国に分かれ、

 百年以上ものあいだ「戦争」という言葉を忘れていた時代。


 その平和の裏側で、

 ひとつの恐れが静かに芽生えていた。


 竜を崇める種族――竜人族。

 彼らの国は小さく、人口も多くはない。

 だが、その信仰はあまりにも異質だった。


 レベル十に到達した者は、竜へと進化する。


 それは神話でも伝承でもない。

 「竜進化魔法」と呼ばれる、確かな理論と実績を伴った技術だった。


 百万人に一人。

 到達できる者は、ほとんど存在しない。


 だが――

 可能性が存在すること自体が、脅威だった。


 完全な竜として生きる種族、竜神族。

 彼らは理解していた。


 このままでは、

 「竜」という存在の特権が失われる。


 そして――

 三つの国が動いた。


 隣接する三つの大国。

 同盟という名を冠した、殲滅。


 侵攻軍――十万。

 対する竜人族の国――三千。


 それは戦争ではなかった。

 虐殺だった。


 城壁は一日で崩れ、

 街は炎に包まれた。


 竜人族の兵は勇敢だった。

 最後まで、誇りを捨てなかった。


 だが、数が違いすぎた。


 竜も助けに入った。

 下位竜。

 中位竜。


 空から炎を吐き、大地を裂いた。


 それでも――

 数には勝てない。


 一頭が百を倒しても、

 次の百が迫る。


 槍が、矢が、魔法が、

 竜の鱗を削り、血を流させる。


 やがて――

 空から、竜が落ちた。


 王城は陥落した。


 王族は捕らえられ、

 広場へ引き出された。


 王。

 王妃。

 第一王子。

 第二王子。

 第三王子。

 第四、第五、第六。


 処刑は、公開で行われた。


 同盟国の兵たちの歓声が、広場を満たす。


 剣が振り下ろされ、

 血が石畳を濡らす。


 それを――

 殺される順を待つ、一人の少年が見ていた。


 第七王子。

 この場では、まだ名を名乗らない。


 竜術レベル十。


 天才。

 神童。

 賢竜。


 そう呼ばれた少年は、

 心優しく、争いを嫌い、

 誰よりも民を想っていた。


 彼は、震えていた。


 恐怖ではない。


 怒りで。


 次に連れてこられたのは、姫だった。


 彼の姉。

 誰よりも彼に優しく、

 いつも頭を撫で、褒めてくれた存在。


 処刑台に立たされ、縛られた姫。


 その時――

 侵攻軍の王子の一人が、笑った。


「竜の泣き声が聞きたい」


 軽い声だった。


 そして――

 姫の腹に、槍を突き立てた。


 絶叫。


 その瞬間、

 世界が、裂けた。


 闇の精霊王――バル=ザルグが、

 少年の前に現れた。


 怒り。

 憎悪。

 絶望。


 すべてが、

 支配に最適だった。


 少年の理性は、喰われた。


 目から、殺意が溢れ出す。

 人とは思えぬ奇声が、喉から漏れる。


 バーサーカー――狂戦士化。


 本来、狂戦士は命尽きるまで人のまま戦い続ける。


 だが――

 少年は、違った。


 闇に呑まれ、

 竜術が暴走する。


 竜への変化。


 本来なら、

 レベル十の竜進化は下位ドラゴン止まり。


 だが、現れたのは――


 山一つほどの暗黒竜。


 神殺しと呼ばれる存在。

 レベル十五。


 誰も、止められない。


 咆哮ひとつで、大地が割れた。


 暗黒竜は、止まらなかった。


 殴る。

 踏み潰す。

 噛み砕く。


 十万の軍勢は、

 一刻も持たず、消えた。


 剣も、盾も、魔法も、

 意味を成さない。


 破壊衝動だけが、世界を満たす。


 侵攻軍の王子は、

 姫を人質に取った。


「止まれ!」


 だが――

 暗黒竜は、見なかった。


 踏み潰した。


 姉ごと。


 その瞬間、

 少年の心は完全に壊れた。


 怒りは悲しみに変わらず、

 悲しみは空虚に変わり、

 空虚は――終わりなき黒となった。


 こうして、

 一つの国は消えた。


 竜人族は滅び、

 平和は終わり、

 暗黒竜だけが残った。


 だが――


 怒りは、

 まだ、終わっていない。


 暗黒竜は、近隣の国へと飛び立った。


 世界に、夜を落とすために。

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