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『昔やっていたテーブルトークRPGの世界に転生し、精霊に好かれるところから始めます』  作者: ゆふぉん


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第六十五話 第六十一層 無双の視点

 六十一層へと続く扉の前で、ユウトは一度だけ立ち止まった。


 剣を抜くことはしない。

 構えも取らない。


 ただ、精霊王の剣を“感じる”。


 イフリートの灼熱。

 クラーケンの水圧。


 二つの精霊王の力が、剣の内側で均衡を保っている。


(……まだ、完全解放じゃない)


 剣術レベルは、まだ七に届いていない。

 だからこそ、剣は応えきらない。


 だが――


(それでも、戦える)


 経験値は十分にある。

 “もう少し”で、次の段階が見える。


 ユウトは扉を押し開けた。


 六十一層。


 視界が開けた瞬間、空気が重くなる。


 敵は、弱くない。


 レベル6〜7帯の魔物が、最初から複数同時に出現する。

 単体で戦う設計じゃない。


 本来なら、消耗戦。


 だが――


「配置、見えた」


 サラの声が、即座に届く。


 ユウトは頷き、走る。



 サラが、先に動く。


「――ノーム」


 大地が“盛り上がる”のではなく、ズレる。


 敵の足場が歪み、前列が踏み込めなくなる。


 その一瞬で十分だった。


 ユウトが、間合いに入る。


 精霊王の剣が閃く。


 炎――イフリート。


 破壊特化の斬撃が、装甲ごと魔力核を焼き切る。


 一撃。


 倒れない。

 戦闘不能になる。


 続けて、水。


 クラーケンの力が刃を包む。


 切断ではない。

 拘束したまま、切り裂く。


 逃げられない。


 敵は、戦い方を理解する前に崩れる。


 後衛が詠唱を始めた瞬間。


「――ウンディーネ」


 水の膜が、魔法を受け止める。


「――シルフ」


 風が背後を取り、詠唱の呼吸を乱す。


 精霊術レベル8。


 もはや命令ではない。

 精霊が、サラの意思を先回りして動いている。


 敵は、魔法を撃てない。


 撃てても、届かない。


 六十一層は、そうして終わった。


 六十二層も。


 六十三層も。


 戦闘時間は短縮されていく。


 迷宮が用意した連携も、

 罠も、

 波状攻撃も――


 成立する前に、壊される。


 ユウトは気づいていた。


(……俺、迷ってない)


 剣を振る理由。

 踏み込むタイミング。

 引く判断。


 すべてが、迷いなく繋がっている。


 サラも同じだった。


 詠唱は短く、

 精霊は即応し、

 無駄な動きが一切ない。


 二人の間に、言葉はいらない。


 視線だけで、十分だった。


 六十五層。

 七十層。

 八十層。


 これまで半年かかっていた三十層分が、

 十五日で消えていく。


 無双。


 だが、それは驕りじゃない。


 積み上げた修行と、

 失敗と、

 死線の結果だ。


 八十九層。


 ユウトは、扉の前で息を整えた。


 精霊王の剣が、微かに震える。


(……近い)


 剣術レベル七。


 解放条件まで、あと少し。


 サラが隣に立つ。


「ここからは、試されるわ」


 ユウトは、静かに笑った。


「それでも――」


 剣を握る。


「ここまでは、俺たちの道だ」


 六十一層から始まった無双は、

 偶然でも、奇跡でもない。


 完成した二人の戦いが、

 九十層の扉の前に立っていた。


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