表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『昔やっていたテーブルトークRPGの世界に転生し、精霊に好かれるところから始めます』  作者: ゆふぉん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/82

第二王子が「冒険者になる」と決めた日

す。

第二王子の本名を明示的に入れた完成稿を、流れを崩さずに書き直します。

(※偽名はまだ出さず、「この時点では名を捨てる直前」という位置づけにしています)



第二王子が「冒険者になる」と決めた日


 その日、戦場は終わっていた。


 剣を振るう者はいない。

 叫ぶ者も、逃げる者も。


 ただ――

 立ったまま死んだ兵士たちが、無言で並んでいる。


 一万七千。


 石となった兵の列は、地平線まで続いていた。


 第二王子――

 レオン=グラディアは、そこに立っていた。


 斧を握ったまま、

 一歩も動けずに。



 妹が、前へ出た。


 王の制止も、

 兵の叫びも、

 すべてを置き去りにして。


 彼女は振り返らなかった。


 願いを告げ、

 指輪を掲げ、

 世界に命じた。


 ――コールゴット。


 光が走り、

 時間が、止まった。


 敵も、味方も、

 区別なく。


 石化が、広がった。


 レオンは、見ていた。


 最初から、最後まで。


 妹の指が、震えながら石へ変わる瞬間を。

 表情が凍りつく、その一瞬を。


 叫べなかった。

 動けなかった。


 あの場にいた全員が、

 同じだった。



 夜。


 山の王の執務室。


 レオン=グラディアは、膝をついていた。


「……父上」


 声は、低い。


「今日のことを、すべて聞かせてください」


 王は、答えなかった。


 答えられなかった。


 だが、逃げもしなかった。


「……現れた」


 王は、重く言った。


「魔王側近、第二位」


 その言葉に、

 レオンの背が強張る。


「名は――

 ルクレツィア=ノクティス」


 その名を聞いた瞬間、

 レオンの中で、何かが噛み合った。


 恐怖ではない。

 納得だった。


「……やはり、か」


 王は、目を伏せる。


「お前も知っているな」


「ええ」


 千年に一人の天才。

 処刑された魔女。

 世界の理から外れた存在。


 妹を“戦利品”ではなく、

 “標本”として見た女。



 レオンは、静かに頭を下げた。


「妹を……探します」


 王が、顔を上げる。


「無理だ」


「分かっています」


「ならば――」


「それでも、行きます」


 迷いはなかった。


「王子としてではありません」


「兵としてでもありません」


 斧を置き、

 真っ直ぐに告げる。


「冒険者として、行きます」



 王は、何も言わなかった。


 止める言葉も、

 許す言葉も。


 ただ、長い沈黙のあとで、

 低く告げた。


「……商人王が動いている」


「二年かけて、冒険者を集めているそうだ」


 レオンは、顔を上げる。


「冒険者を……?」


「表向きは、各国支援」


「だが実際は――

 世界が滅びる前に、“使える者”を集めている」


 レオンの目に、

 初めて火が灯る。


「……そこに行けば」


「同じ目的を持つ者が、いる」


 王は、ゆっくりと頷いた。


「お前一人では、届かぬ」


「だが――

 冒険者なら、道は繋がるかもしれん」



 レオンは、深く一礼した。


「必ず、妹を探し出します」


「生きていても、

 石のままでも」


「必ず――

 取り戻します」


 王は、しばらく目を閉じていた。


 そして、低く告げた。


「……生きて帰れ」


 それは、

 王としてではなく、

 父としての言葉だった。



 翌朝。


 レオン=グラディアは、王城を出た。


 肩書きも、

 護衛も、

 紋章もない。


 あるのは、斧と――

 決意だけ。


 冒険者を集める場所へ。


 妹を探すために。


 そしていつか、

 ルクレツィア=ノクティスの夜へ辿り着くために。


 この名が、

 やがて世界から消えることを――

 この時、彼自身が最もよく分かっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ