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『昔やっていたテーブルトークRPGの世界に転生し、精霊に好かれるところから始めます』  作者: ゆふぉん


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53/82

1000年に1人の天才

――400年の夜に、生き残った魔女


 彼女は、かつて

 魔法国が誇る至宝だった。


 名を――

 ルクレツィア=ノクティス。


 四百年前。

 魔法研究が国家の根幹を成していた時代。


 彼女は、生まれながらに異常だった。


 魔力容量、詠唱速度、理論構築力。

 そのすべてが、既存の尺度を破壊していた。


 千年に一人の天才。


 誰が言い出したのかは分からない。

 だが、誰も否定できなかった。


 そして同時に――

 絶世の美女。


 容姿すら、才能の一部として扱われた。


 人々は彼女を見て、

 魔法とはこうあるべきだと夢想した。


 だが――

 その本質を、誰も理解していなかった。


 ルクレツィアにとって、

 人間は「尊重すべき存在」ではなかった。


 理解すべき構造体だった。


 筋肉は、なぜ動くのか。

 魂は、どこに宿るのか。

 恐怖は、どの段階で意思を折るのか。


 それらは、机上では解けない。


 ――なら、確かめるしかない。


 彼女は実験を始めた。


 最初は、重罪人。

 次に、戦争捕虜。

 やがて、孤児や病人。


 結果は、常に正確だった。


 理論は証明され、

 魔法は進化し、

 魔法国は、確かに恩恵を受けた。


 誰も止めなかった。


 いや――

 止められなかった。


 彼女の成果は、

 あまりにも魅力的だったからだ。


 転機は、ある夜だった。


 彼女は、淡々と言った。


「魔法とは、血と同じよ」


「なら、血を捨てたらどうなるか――

 試す価値があるでしょう?」


 国家は、沈黙した。


 その沈黙が、

 拒絶ではなく恐怖だと理解した瞬間、

 ルクレツィアは初めて“失望”した。


 魔法国は、彼女を切り捨てた。


 魔女裁判。

 公開処刑。


 理由は単純だ。


 彼女は、

 国家の制御を超えた。


 処刑の日。


 炎も、聖水も、杭も用意された。


 人々は叫び、

 救済を名目に彼女を殺そうとした。


 だが――

 彼女は、笑っていた。


「遅いのよ」


 その時すでに、

 彼女は ヴァンパイヤクィーン だった。


 生と死の境界を越え、

 人という枠組みを捨てた存在。


 通常の手段では、殺せない。


 処刑の瞬間、

 彼女は“消えた”。


 死んだのではない。


 世界の側から、外れただけ。


 それから四百年。


 彼女は、戻ってきた。


 魔王側近・第二位として。


 理由は、単純だった。


 魔王は、彼女を理解した。


 理解し、

 恐れず、

 制御しようともしなかった。


 それだけで、十分だった。


 彼女はそこで、

 一つの結論に至る。


 ――この世界には、

 “超えてはならない線”がある。


 だが同時に、

 越えてしまった存在は、消されない。



 現在のルクレツィアは、

 戦争に興味がない。


 支配にも、征服にも、興味がない。


 彼女が欲するのは、

 **“観察に値する例外”**だけ。


 だからこそ、

 あの王女の石像に目を留めた。


 願いで世界を止めた存在。

 自己を犠牲にして秩序を固定した、

 唯一の標本。


「美しいわ」


 それは、愛でも憎しみでもない。


 研究者としての、純粋な評価。


 彼女は言った。


「私の屋敷に飾りたい」


 それは、脅迫ではない。


 宣言だった。


 返すかどうかは、王が選べばいい。


 ただし――

 選択肢の代償は、すべて彼女が決める。


 ルクレツィア=ノクティス。


 彼女は魔女ではない。

 英雄でもない。


 世界を材料として扱う女王。


 そして――

 彼女はすでに、

 世界のことわりを超えている。


 測定不能。

 規格外。

 魔法:12. この世界はヒトは10が最高でそれ以上はない

 セージ:10


 それでも、

 世界は彼女を拒絶できない。


 なぜなら――

 拒絶する方法を、

 もう、失っているからだ。


 その夜は、

 まだ、終わっていない。


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