表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『昔やっていたテーブルトークRPGの世界に転生し、精霊に好かれるところから始めます』  作者: ゆふぉん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/82

第六十一話 三精霊王

海が、再び動いた。


波が高くなったのではない。

海そのものが、意思を持って迫ってくる。


砂浜が、もう一度沈む。


「……来る」


 ユウトの声は、低く、短い。


 サラは一歩前に出た。


 背中越しに、ユウトの呼吸が乱れているのが分かる。

 水圧で削られた肺。

 六ゾロで生き延びただけの状態。


(ここで倒れさせるわけにはいかない)


 サラの指が、指輪に触れる。


 風の王――イルク。


 これまでの“加速”や“回避”とは違う。

 今回は、壊すために使う。


空気が、悲鳴を上げた。


「――暴風テンペスト」


 風が、爆発した。


 回転でも、直進でもない。

 無数の風の刃が、同時に発生する嵐。


 水面が、引き裂かれる。


 クラーケンを覆っていた“水の保護”が、ズタズタに裂けていく。

 触腕の表層が、削ぎ落とされ、流れが乱れる。


 支配が、崩れ始めた。


 クラーケンが、初めて明確な反応を見せる。


 水圧が、乱れる。


 “制圧”が、“抵抗”に変わった。


「……今!」


 ユウトが叫ぶ。


 だが、サラは止まらない。


 踏み込む。


 風の中心へ。


「……破壊が必要なら」


 一瞬だけ、視線を伏せる。


「……私がやる」


 精霊術の限界を、超える選択。


 サラの魔力が、一気に引き抜かれる。


「――デス・フレア」


 黒い炎が、暴風に乗った。


 水に消されない。

 風が、炎を守っている。


 黒炎が、クラーケンの中心へ叩き込まれる。


 海が、悲鳴を上げた。


 だが――


 次の瞬間、サラの膝が崩れた。


「……っ」


 指輪の光が、急激に落ちる。


 MP、完全枯渇。


 サラは、そのまま砂浜に倒れ込む。


「サラ!」


 ユウトが駆け寄る。


 抱き起こすが、反応はない。


 呼吸はある。

 だが、意識は完全に落ちている。


(……やり切ったんだ)


 暴風で支配を裂き、

 黒炎で“核心”を露出させた。


 だが、クラーケンはまだ生きている。


 海が、再びうねる。


 触腕が、形を取り戻そうとする。


 ――今度こそ、終わりにしなければならない。


 ユウトは、立ち上がった。


 剣を、両手で握る。


 精霊王の剣が、低く唸る。


「……イフリート」


 呼びかけは、命令じゃない。


 選択だ。


 炎が、応えた。


 だが、暴れない。

 広がらない。


 一点に、収束する。


『……また、我を使うか』


 低く、重い声。


『水の王の前で』


「必要だからだ」


 ユウトは、はっきり言った。


「ここで終わらせる」


 剣の刃に、炎が集まる。


 今度は、焼き尽くすためじゃない。

 貫くための炎。


 暴風で裂かれ、

 黒炎で暴かれた一点。


 クラーケンの核。


 そこだけ、水の流れが不自然に歪んでいる。


 ユウトは、水面へ踏み出した。


 再び、《水上歩行》。


 だが今度は――

 水が、拒まない。


 理解された者に、通路を与える。


 その一歩が、確信に変わる。


(……ここだ)


 最後の六ゾロを、

 振る必要はなかった。


 これは奇跡じゃない。


 理解の結果だ。


 ユウトは、剣を振るった。


 一閃。


 音は、なかった。


 水が、止まる。


 次の瞬間。


 海が、崩れた。


 巨大な存在が、形を失い、

 水へと還っていく。


『……よく、見ていたな』


 クラーケンの声が、微かに響く。


『力ではない』


『選び、理解した者にこそ、支配は不要』


 水の精霊王は、静かに消えた。


 砂浜が、ゆっくりと迷宮の石床へ戻っていく。


 ユウトは、その場に膝をついた。


 剣を支えに、息を整える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ