第三十九話 59層まで
炎の巨人との戦いから半年がすぎ、剣術レベルを6にあげた。
第五十九層を抜けた時点で、ユウトははっきりと理解していた。
――もう、この階層帯では負けない。
レベル5-7の敵ですらだ
精霊王の剣は、振るうたびに応えてくる。
精霊王の指輪は、その力を過不足なく受け止める。
力が溢れる感覚はない。
暴走もしない。
ただ、無駄が削ぎ落とされていく。
最後の魔物を斬り伏せた瞬間、
剣を握ったまま、ユウトは息を整えた。
力が流れ込む感覚はある。
だが、重くない。
むしろ――整う。
精霊の流れが、剣と身体と指輪を一本につなげていく。
無双している理由が、はっきりした。
数値ではない。
力押しでもない。
循環だ。
「……剣が、完全に噛み合ってきてる」
サラが、戦場を見渡しながら言う。
彼女はもう、弓を構えていなかった。
必要がない。
ユウトが前に出れば、それで終わる。
「でも、油断はしない」
ユウトは、剣を肩に担ぎながら答えた。
「この先は、たぶん……」
言葉を切り、前方を見る。
通路の先。
空気が、明らかに違う。
精霊の流れが、静かすぎる。
サラも、同じことを感じていた。
「……59層ね」
ただの階層じゃない。
これまでの延長でもない。
精霊王の剣が、わずかに震える。
昂揚ではない。
警告でもない。
備えろという合図。
ユウトは、一度だけ立ち止まった。
剣を握り直し、
指輪の感触を確かめ、
呼吸を整える。
ここまでは――通過点。
だが、次は違う。
「行こう」
短く言って、歩き出す。
精霊が、静かに後を追う。
第60層。
そこに待つのは、
無双の続きか、
それとも――
初めて“止められる相手”か。
答えは、もうすぐ分かる。




