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『昔やっていたテーブルトークRPGの世界に転生し、精霊に好かれるところから始めます』  作者: ゆふぉん


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第三十六話 炎王弓

 宝箱は、音もなく開いた。


 白い世界樹の根元に佇むそれは、古いが損なわれていない。

 精霊文字が、呼吸するように淡く明滅している。


 中に収められていたのは、二つ。


 一つは、赤黒い金属と世界樹で形作られた長弓。

 近づくだけで、空気がわずかに熱を帯びた。


「……炎王弓」


 サラが、静かに名を告げる。


「イフリートの系譜。

 街を焼き、歴史ごと消した記録が残っているわ」


 ユウトは弓に手を伸ばした。


 だが――

 構えようとした瞬間、弓が微かに震え、力が抜けた。


「……引けない」


 サラはすぐに弓を見た。


「使用条件ね。

 精霊術と弓術レベル7以上」


 ユウトは、小さく息を吐いた。


「……今の俺じゃ、届かないか」

そもそも剣術だし、、佑都の記憶が羨ましいと感じる


 その弓に、サラがそっと手を伸ばす。


「確認するだけよ」


 弓を取った瞬間、空気が変わった。


 圧。


 精霊文字が淡く赤く灯り、弦が自然に現れる。


「……条件、満たしてる」


 サラは一射だけ、遠くの岩壁へ向けて放った。


 矢は途中で炎を纏い、

 着弾と同時に――爆ぜた。


 轟音。


 岩壁は、抉られるのではなく、存在ごと消えた大きな空いた


 サラはすぐに弓を下ろす。

 わずかに体が揺れ、ユウトが支えた。


「……MPも消耗するのね」


 彼女は弓を見つめ、静かに言った。


「これは、戦うための武器じゃない」


「世界を壊す力よ」


 そう告げた瞬間――

 空間に、別の気配が満ちた。


『――これで、よいのか?』


 低く、重い声。


 サラの背筋が凍る。


「……イフリート……」


 炎王弓が、かすかに鳴る。


『力を抑え、使わぬことを選ぶ』


『それが、王に仕える者の答えか』


 次の瞬間。


 サラの意識に、像が流れ込んだ。


 燃え落ちる空。

 降り注ぐ、終焉の光。


 理解として刻まれる魔法名。


《デス・フレア》 精霊術9

メテオより範囲は狭いが世界を壊すと恐れられている


 炎を超えた、純粋な破壊。

 街を広範囲で存在ごと消す魔法。


 気づけば、サラは弓を構えていた。


 意思とは無関係に、体が反応する。


 炎が集まり、

 世界が、わずかに震える。


「やめろ!!」


 ユウトの声で、我に返る。


 サラは、弓を下ろした。


 荒い息。


「……この更に上が、ある……」


『破壊を恐れるか』


『ならば、使うな』


『だが――』


 一拍。


『守るために、世界を焼く覚悟を持て』


 気配が、消える。


 沈黙が戻る。


 サラは、しばらく宝箱を見つめていた。


「……世界を守るには」


 低く、独り言のように。


「破壊が、必要な時もある」


 ユウトは、何も言わなかった。


 それが、彼女の結論だと分かっていたからだ。


 サラは一歩踏み出し、炎王弓を拾い上げる。


 先ほどまでの圧も、拒絶もない。

 ただ、静かな重さだけが残っている。


 アイテムBOXを開き、弓を収めた。


「使うかどうかは……その時、選ぶ」


 誓いではない。

 覚悟だった。


 ユウトは、ゆっくりと息を吐く。


「……俺は、破壊しない」


「知ってる」


 サラは即答した。


「だから、あなたが前に立つ時は――」


 一瞬、言葉を選ぶ。


「……私が、後ろで選ぶ」


 炎王弓は、アイテムBOXの奥で眠る。


 使われないことを願われながら、

 使われるべき時を、確かに待って。


 世界を守るための破壊は、

 まだ――選択肢として、そこに在った。

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