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『昔やっていたテーブルトークRPGの世界に転生し、精霊に好かれるところから始めます』  作者: ゆふぉん


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第三十四話 生か死か

ユウトは、倒れたまま動かなかった。


 精霊王の剣を握った右手だけが、かろうじて地面に触れている。


「……ユウト……?」


 サラが駆け寄り、抱き起こした瞬間――

 その異変に気づいた。


 呼吸が、浅い。


 胸は上下しているのに、空気を取り込めていない。


 肌は焼け爛れ、鎧の隙間から覗く皮膚は赤黒く変色していた。


「……肺が……」


 炎の巨人の熱。

 致命傷には至らなかったが、内側まで焼かれている。


 サラは震える手で、ユウトの指輪に触れた。


 回復の指輪が淡く光る。


 裂けた肉が塞がり、焼けた皮膚が再生していく。

 外傷は、確かに癒えていく。


 だが――


「……だめ……呼吸が……!」


 焼けた肺は、回復しきれない。


 ユウトの唇が紫色に変わり、

 意識が、急速に遠のいていく。


(……まずい)


 身体が、理解していた。

 これは――時間の問題だ。


 ユウトは、必死に意識を繋ぎ止める。


 滲むように、表示が浮かび上がった。

 意識が遠のく中、

 滲むように視界の端に文字が浮かび上がった。


――経験値を獲得しました――

2000

2000

2000

(中略)

2000

9999


――第三十層踏破――

――精霊王イフリート解放――


――合計経験値:61,997――


 数字を見た瞬間、ユウトは理解した。


――スキルを解放できます――

――使用可能経験値:61,997――


(使わなきゃ……意味がない)


 生きなければ、次はない。


「……精霊術……」


――精霊術を解放しますか?――

――精霊術:Lv6――


「……YES……」


 世界が、わずかに揺れた。


――精霊術が上昇しました――


 同時に、指輪が強く反応する。


 熱を帯びた光が、ユウトの身体を包み込んだ。


(……頼む……)


 これは回復ではない。

 賭けだ。


 レベルアップによる装備条件の変化。

 その可能性に、すべてを預ける。


――装備条件を満たしました――

――回復指輪・性能上昇――


 焼けた皮膚が、ゆっくりと癒えていく。

 激痛が、鈍っていく。


 だが――


 肺が、応えない。


(……足りない……)


 回復は進んでいる。

 それでも、間に合わない。


 視界が、暗転する。


(……サラ……)


 その名を心の中で呼んだ瞬間、

 ユウトの意識は、闇に沈んだ。


「ユウト!!」


 サラは叫び、彼を抱き締めた。


 まだ生きている。

 だが、このままでは――確実に死ぬ。


 回復の指輪は光っている。

 レベルも上がっている。


 それでも、追いつかない。


「……お願い……」


 精霊は応えている。

 だが、足りない。


 その時、サラは気づいた。


 自分の中に残された、最後の選択肢。


 経験値。

 ずっと温存してきた力。


「……私が……」


 歯を食いしばり、決断する。


「……レベルを上げる」


――精霊術レベルが上昇します――

――精霊術:Lv8――


 空気が、変わった。


 精霊たちの気配が、はっきりと“集まる”。


 サラは、ユウトの胸に両手を当て、静かに詠唱した。


「――大いなる精霊よ」


「傷ついた命に、息を」


「流れを繋ぎ、命を戻せ」


 光が、柔らかく広がる。


 精霊回復魔法

 《エレメンタル・リストレーション》


 水でも、風でもない。


 精霊そのものが、命の流れを修復する。


 焼けた肺が、ゆっくりと再生していく。


 止まりかけていた呼吸が、

 深く、大きく戻った。


「……っ……!」


 ユウトの胸が、大きく上下した。


 次の瞬間。


「……サラ……?」


 瞳が、開く。


 目の前で、サラが泣いていた。


 声も出さず、

 必死に涙を堪えながら。


「……ばか……」


 そう言って、彼の胸に額を押し付ける。


「……本当に……ばか……」


 ユウトは、弱々しく笑った。


「……助かった?」


「……当たり前でしょ……」


 サラの声は、震えていた。


 精霊王の剣が、静かに赤く輝く。


 精霊王の剣(解放:イフリート)


 炎は、もう暴れない。


 それは――

 守るための力になっていた。


 サラは、そっとユウトの手を握る。


「……次は……一緒に生き残るわよ」


 泣き顔のまま、

 そう、誓うように。


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