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『昔やっていたテーブルトークRPGの世界に転生し、精霊に好かれるところから始めます』  作者: ゆふぉん


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第二十九話 第四階層――選択

 第三階層を越えた先に、扉はなかった。


 ただ、下り坂が続いていた。


 白い石の床が、緩やかに、だが確実に深部へ導いている。


 空気が、変わる。


 重さではない。

 濃度だ。


 呼吸をするたび、胸の奥に何かが溜まっていく。


「……ここからは」


 サラが、低い声で言う。


「私も、よく知らない」


 ユウトは足を止めなかった。


 第四階層。


 世界樹のダンジョンが、

 “力”ではなく“選択”を求め始める領域。


 やがて、坂が終わる。


 開けた空間。


 円形の広場。


 そして――

 五つの気配。


 風。

 炎。

 水。

 土。

 森。


 精霊王ではない。

 だが、それに限りなく近い“意思”。


 圧倒的だった。


 剣を抜く意味が、ない。


 精霊術を使えば――

 即座に呑み込まれる。


 逃げ場は、ない。


 そのとき、頭ではなく、

 存在そのものに問いが落ちた。


『――選べ』


 声ではない。

 命令でもない。


 選択肢の提示。


 精霊たちは、動かない。


 だが、明確に“待っている”。


(……何をだ)


 ユウトは、剣を見た。


 精霊王の剣。


 精霊を従わせる剣。

 だが――今は、眠っている。


(……使えば)


 一瞬で楽になる。


 ここまで来た理由を、

 正当化できる。


 だが――


 第三階層で、何を捨てると決めた?


 ユウトは、剣を鞘に戻した。


 次に、精霊術を思い浮かべる。


 呼びかければ、

 反応はあるだろう。


 だが、それは――

 “力を借りる”選択だ。


(……違う)


 ここで問われているのは、

 どの力を使うか、じゃない。


 どう立つかだ。


 ユウトは、一歩前に出た。


 何も使わない。


 剣も。

 精霊術も。


 ただ、言葉を発した。


「……俺は」


 声は、震えなかった。


「従わせに来たわけじゃない」


「選ぶために、来た」


 精霊の気配が、わずかに揺れる。


『何を選ぶ』


 ユウトは、答えた。


「並ぶことを」


 支配しない。

 命令しない。


 頼らない。


 それでも進む。


 沈黙。


 長い、長い沈黙。


 やがて――

 風の気配が、わずかに流れた。


 炎が、揺らいだ。


 水が、脈打つ。


 土が、静かに鳴る。


 森が、息づく。


 拒絶ではない。


 保留。


 だが、前進だ。


 視界に、文字が浮かぶ。


――第四階層・試練達成――

評価:未確定

進行:継続


 ユウトは、深く息を吐いた。


 成功でも、失敗でもない。


 だが――

 選択は、届いた。


 背後で、サラが小さく息を呑む。


 何が起きたのか、分からない。


 だが――

 確かに、空気が変わった。


 第四階層は、終わっていない。


 だが、

 世界樹はもう一度、道を示した。


 次は、

 力を得るか、拒むか。


 その選択が、待っている。

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