第十八.五話 佑都の記憶
世界樹の前で目を閉じた瞬間、
佑都として生きていた頃の感覚が、静かによみがえった。
数字。
段階。
積み上げ。
(……やっぱり、同じだ)
この世界は、感情だけで成長を許さない。
強くなりたいと願っただけでは、届かない。
必要な経験。
正しい選択。
そして、越えるべき順番。
頭の中に、自然と“表”が浮かぶ。
LV2 必要経験値:1000
LV3 必要経験値:3000
LV4 必要経験値:5000
LV5 必要経験値:10000
LV6 必要経験値:20000
LV7 必要経験値:30000
LV8 必要経験値:50000
LV9 必要経験値:90000
LV10 必要経験値:150000
懐かしい。
だが、同時に厳しい。
英雄という言葉が軽くならない理由が、ここにある。
(今回、獲得した経験値は……)
意識の奥で、
一つの数字が浮かび上がる。
22,998
救った村。
守り切った命。
逃げずに選び続けた判断。
それらすべてが、
別々の重みとして刻まれている。
(じゃあ、順に当てはめる)
LV1 → LV2 1000 消費
残り 21,998
LV2 → LV3 3000 消費
残り 18,998
LV3 → LV4 5000 消費
残り 13,998
LV4 → LV5 10000 消費
残り 3,998
ここで、止まる。
次は二万。
どうやっても、届かない。
(……精霊術は、ここまで)
精霊術レベル五。
熟練。
精霊が、
「話を聞いてもいい」と判断する境界線。
前世で何度も見てきた。
この辺りから、世界は甘くならない。
(剣術に回す選択もあった)
だが、即座に否定する。
剣は、身体だ。
反射と筋力と、積み重ね。
十二歳の身体では、
経験値だけを積んでも意味がない。
(でも――精霊は違う)
相手は意思を持つ存在。
力ではない。
数値でもない。
どう向き合うか。
どう頼むか。
どう距離を取るか。
それは――
前世で、何年も当たり前にやってきたことだった。
⸻
(結論は、変わらない)
剣術じゃない。
先に上げるべきは、精霊術。
英雄の条件は、七。
だが、その前に越えるべき壁がある。
熟練。
レベル五。
そこに立たなければ、
精霊王の剣も、
世界樹も、
本当の意味では振り向かない。
⸻
ユウトは、目を開けた。
世界樹は、沈黙している。
だが、その沈黙は拒絶ではなかった。
待っている。
この世界で、
どんな成長を選ぶのか。
(……間違ってない)
佑都の記憶は、答えをくれない。
だが――
判断の軸にはなる。
まずは、精霊に好かれる。
それが、
王になるための最初の段階だ。




