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言い訳ガチャ課の逆襲 〜遅刻を捏造するアプリが、なぜか現実世界を再構築し始めた件  作者: FujiNoYukiAI


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6/6

私の信じる力は、時給で計算できません」〜出張先で二人きりの夜

トーヨーケミカル社のロゴが入ったダサいビジネスバッグを提げた山田と、ノートPCと解析ツールで武装した佐藤は、新幹線のぞみ号の座席に並んで座っていた。伊吹からの任務は、「風間零の残した次のヒントを求めて、彼の故郷である北陸地方へ向かえ」というものだった。 

「…まさか、僕の遅刻のせいで、佐藤さんと出張に来ることになるとは」山田は窓の外の景色を見ながら呟いた。

「特殊言霊探査チームとして光栄ですよ、先輩」佐藤は冷静に答える。「ですが、田中課長からしつこくメッセージが来ています。『グリーン車ではなく普通車指定席を選んだ理由を、400字以内で業務報告書にまとめろ』だそうです」

「ああ、もういい! 課長の経理魂は、この世界を滅ぼすKAIJUよりもタチが悪い!」

山田はため息をついた。周囲には誰もいない。二人は今、公的な任務という名の、プライベートな空間にいる。

「それにしても、佐藤さん。なんで、僕のデタラメな言い訳をあんなに信じてくれるんですか? 庭から石碑が出ても、KAIJUが出ても…」

佐藤はPCから目を離さず、淡々と答えた。

「論理的なんです、先輩」

「論理的?」

「はい。世界がシミュレーションである可能性は、理論物理学で否定できません。そして、現実世界が物理法則を破って変異しているという『現象』は、私の目で確認できています。ならば、その現象の『原因』である先輩の言い訳を信じる方が、『この世にはKAIJUは存在しない』という古い常識を信じるよりも、よっぽど合理的で論理的です」

山田は絶句した。「…佐藤さんの論理は、ちょっと、怖いですよ」

夜。二人は北陸のビジネスホテルの一室にチェックインした。もちろん、経費削減のため、ツインルームだ。

佐藤は持参したプロジェクターを壁に投影し、風間零が残した次のヒントを解析し始めた。

「風間は、この地で『言い訳ガチャ』のプロトタイプを開発した痕跡があります。この古い座標データ…たぶん、彼の学生時代の秘密基地か何かでしょう」

佐藤は解析の手を止め、コップに入れた水を飲み干した。そして、ふと山田の方を向いた。

「実は…私、先輩の言い訳が現実になる前から、先輩のことが気になっていました」

山田は驚きで固まった。「え…?」

「先輩の遅刻の言い訳は、いつも他の人より一歩だけ、想像力が豊かだった。他の社員が『腹痛』とか『渋滞』とか言ってる中、先輩だけは『突然、家に巨大な磁石が出現して』とか、『未来の自分が警告しに来て』とか…」

彼女は少し照れたように、髪を耳にかける。

「誰も信じないけど、先輩はいつも真剣な顔でその嘘をついていた。その、真剣なデタラメさが、私には魅力的だったんです」

山田は顔が熱くなるのを感じた。「それって…つまり…」

「つまり、私にとって、先輩の嘘は最初から『真実』だったということです」佐藤はきっぱりと言い切った。「そして、今、私のその『信頼』が、本当に世界を固定する力になっているなら…」

彼女は山田の手をそっと握った。

「私のこの『信じる力』は、田中課長の言う時給や出張手当で計算できるものじゃありません。これは、先輩とこのカオスな世界に対する、私自身の投資です」

山田は、佐藤の真剣な瞳と、彼女の冷たい手のひらの熱を感じた。彼は、自分をこのカオスから救い出すのは、もはや公権力でも、科学でもなく、この後輩女子の純粋な「愛(信頼)」なのだと悟った。

「佐藤さん…わかった。僕が、次のガチャを引く。この運命を受け入れるよ」

彼はスマホを取り出し、「言い訳ガチャ」アプリを起動した。画面には、「NEXT LOCATION」と表示され、レバーが光っている。

「風間さんが探している『ある人物』のヒントが出るといいんだけど…」

佐藤は、緊張した面持ちで山田の隣に座る。

ジャキン! キュイイイイイン!

赤く点滅する【UR】の演出が終わり、画面に表示されたのは、予想外の言い訳だった。

本日のお詫び:遅刻理由

「昨夜、風間零が『ある人物』と交わした古い約束の場所へ、アプリの誘導に従って向かったため、やむを得ず遅刻いたしました。その場所は、雪に埋もれた古い遊園地です。」

—言訳ガチャ Ver.3.0.4—

「古い遊園地…雪に埋もれた?」山田は顔を見合わせた。

佐藤は、すぐにノートPCを開く。

「先輩! このエリアの廃墟リストと、座標データが一致します! 風間がプロトタイプを開発していた、まさにその場所です! 今から向かいましょう!」

山田は立ち上がった。「よし。僕の遅刻のせいで、次は遊園地が何かに変異するかもしれない。急がないと!」

深夜、二人は雪が降り積む北陸の町を、運命の場所へと向かって走り出した。二人の間には、もはや上司の詮索も、KAIJUの影もない。あるのは、一つのデタラメな言い訳と、それに対する確固たる信頼だけだった。

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