【8月10日(日) 晴れ、Wi-Fi強め】
日曜は恋の遠距離戦。
学校で会えないこの日こそ、“間接的アプローチ”のチャンス。
選んだのは、現代兵器——SNS。
僕が使っているのは読書記録系のSNS、「読トモ」。
ここでは本の感想を投稿できて、趣味が合う人と繋がれることになっている。
つまり、恋の地雷原でもある。
◆作戦その9:本の感想で距離を縮めろ!
昨日、図書室で川崎さんが読んでいたのは——
『夜のピクニック』/恩田陸
見逃してない。しっかり記憶している。
なぜなら彼女が、ページをめくるとき、左手の小指を少しだけ曲げる癖があって、それが——
……いや、今はそういうのいいんだ。
午後、さっそく書いた感想ポスト:
**『夜のピクニック』再読。**
「誰かと黙って並んで歩く」って、なんであんなに特別なんだろう。
距離を縮めるんじゃなくて、“そこにいる”ってことが、もう嬉しい。
そういう関係、いいなって思った日曜日。
→ポイント:彼女の感性に寄せつつ、自分の感情も出す
→タグ:#夜ピク #黙って並んで歩きたいだけの人生だった
投稿して数時間。
いいね:3(うち1は自分)
コメント:なし
川崎さん:反応なし
でも……でも、プロフィール欄の“足あと機能”を見たら……
**「K.K」**って名前が来てた!
川崎さんのイニシャル、K.K!!
しかも前にも一度だけ来てたあの名前!!
※自分でも気持ち悪いと思う。でも、オレ、今すごく幸せ。
→【本日の結論】
・SNSは、直球じゃないからこそ刺さるかもしれない
・読書の感性は、言葉を超えて共有できると信じたい
・彼女は、たぶん少しだけ僕を“意識”し始めている(たぶん……きっと……たぶん)
夜、スマホを握りしめたまま寝落ちして、夢を見た。
夢の中で僕と川崎さんは、夜の廊下をただ歩いていた。
何も話さないけど、それでもいいって思えた。
……そんな恋が、現実に少しでも近づいていたらいいな。
【明日予告】
8月11日(月)『夏祭りが来る。偶然を装って、花火の横に立て』
年に一度の恋イベント到来!
運命をねじ曲げろ!
「偶然ここに来たんだ」を100回練習する日がやってきた!