【8月9日(土) 曇り、図書室は晴れ】
勝負の舞台は、午後の図書室。
静寂と紙の匂いが支配するこの空間こそ、恋の逆転劇にはもってこいだと俺は踏んだ。
なぜなら、川崎さんが毎週土曜日、図書室で小説を読んでいるのを、
偶然という名の3週連続ストーキング(※合法的観察)で知っているからだ。
◆作戦その8:本棚越しの偶然遭遇作戦
14時05分、入室。
彼女の位置、確認。
窓際の席、3列目。読むのは——あれ、恋愛小説っぽい……?
動揺を抑え、慎重に“たまたま”通るフリで横を通過。
「おっ、川崎さん……じゃん?」という驚きを装う予定だったが……
彼女、こっち見てない。
むしろ真顔で本を読んでる。集中モードMAX。
これはまずい。下手に声をかけたら「騒音認定」で終わる。
ここでPlan Bへ。
◆Plan B:隣に“偶然”座る
図書室ルールでは、空席が多い場合、他人の隣に座るのは気まずさ警報レベル3。
だが、俺は信じてる。恋の本気は、ルールをちょっとだけ超えても許されるって。
1席挟んで、隣に着席。
……その瞬間、彼女がチラッとこっちを見た。
うわっ、見た!目が合った!?いや違う!?顔見ただけ!?
表情は……“微妙”。
このままじゃ終われない。
僕は机に広げたノートに、“なにげなく”詩の一節を書いた。
「静かな午後に、となりに座る誰かの気配。
声はないけど、風が吹いた気がした。」
川崎さん、読んだ?いや読んでない?いやチラ見した!?したよね!?したと言って!!
そして、奇跡が起きた。
川崎さんが、ほんの小さく笑った(気がした)。
その笑顔は、明らかにあの日の“LOVE弁笑い”より、やわらかかった。
そして彼女は、帰るとき僕の方を見て、小さく会釈をした。
一言も言葉は交わさなかった。
それでも、今日の俺の心は、図書室の窓みたいに澄んでいた。
→【本日の結論】
・図書室は、恋の爆発は起きないけど、確実に“種”が撒ける場所
・「何もしない勇気」が、たまには功を奏す(っぽい)
・人の隣に静かに座れる男は、ちょっとだけ大人な気がした
夜、家に帰って日記を書く手が止まらない。
今日の彼女の笑みは、“からかい”でも“失笑”でもなく、
たぶん、“ちょっとだけ心を許した顔”だった。
この小さな勝利を、僕は宇宙に飾ろう。
【明日予告】
8月10日(日)『SNS作戦・彼女の好きな本をさりげなくポストせよ』
川崎さんの読んでいた本の背表紙、見逃してないぜ。
次の一手は、デジタルなさりげなさで距離を詰める!