【8月8日(金)晴れ時々ガッカリ】
作戦名:「ナチュラルに爽やか男子」
狙うは、モテの王道。
無理なキャラ作りはもうやめだ。
笑顔。自然体。いい天気のときは「今日、気持ちいいね」って言う。それだけでいい。
“普通”が一番難しいって言うけど……
今日の俺はちがう。
目指せ、清涼感あるミント系男子。
◆作戦その7:さわやか系男子デビュー
朝、昇降口。川崎さんを見かけた。
よし、まずは挨拶だ。
僕:「おはよう!」
川崎さん:「……あ、おはようございます」
「ございます」!? 他人行儀か!?
でもよし、悪くはない。
ここで余計なことは言わず、にっこり笑ってその場を立ち去るのが“さわやか流”。
結果:
階段の2段目でつまずき、豪快に前のめり。
体勢を崩しながら僕は叫んだ。
「あああぶない!!だいじょぶ僕!?(錯乱)」
川崎さん:「……!?」
たぶん彼女、笑いをこらえてた。
いや、むしろ……こらえてなかった。
見た。口元がぷるぷるしてた。あれは完全に「またかよこいつ」モード。
そして昼休み。
気を取り直して、さりげなく廊下で彼女とすれ違ったとき――
僕:「今日、天気いいね」
川崎さん:「……え? あ、うん、暑いね」
違う。ちがう。
その返しじゃない。「ほんとだね~」とか「空きれいだね」とか、そういう流れじゃないのか!?
マニュアル通りに行かない現実に、心がしおれてゆく。
→【本日の結論】
・さわやかキャラは「普段の信用」がないと成立しない
・第一印象が「ポエム+LOVE弁」だと、挽回は困難
・川崎さんの警戒心は日々強固な防壁へと進化している
夜、自分の顔を鏡で見てみた。
思ってたより「さわやか」じゃなかった。
なんというか、野暮ったい。あと髪がハネてる。あと目の奥がうるさい。
それでも、僕は明日も挑むつもりだ。
なぜなら——
恋は、羞恥と失敗の果てにしか、落ちてこないからだ。
【明日予告】
8月9日(土)『意外とありか?図書室遭遇作戦』
狙うは、静かなる偶然の出会い。
図書室で、彼女の隣に“偶然”座る作戦。
――ただし、吉岡さん(図書委員)にはすでにバレている気がする。