【8月7日(木)曇りのちケチャップ】
母に頼んで、愛情たっぷりオムライス弁当を作ってもらった。
テーマは「恋を伝える味覚爆弾」。
蓋を開けると、そこには――
ケチャップで書かれた赤い文字:「LOVE♡」
文字の下にはふわとろのたまご、そして恥じらいと焦げ目が共存していた。
◆作戦その6:弁当男子はモテるのか?
昼休み、場所は教室の一角。
川崎さんの席が3メートルほど先。
それを計算し、机の角度を調整。弁当の蓋を、さりげなく開ける。
「パカッ(音声効果)」
——開いた弁当箱。見よ、これが僕の情熱の具現。
川崎さんの方を見ると……
見てない。
微動だにしない。
というか普通にサンドイッチ食べてる。
ならばと、わざとらしくケチャップ文字をスプーンで崩しながら、独り言を放つ。
「あ~、今日も母さんの“LOVE”弁当、沁みるわ~……」
3秒後、隣の席の石田が小声で言った。
「お前、それ怖いぞ」
だが、事件はその後に起きた。
食べ終わった後、ちょっと勇気を出して川崎さんに話しかけた。
僕:「あ、あのさ……弁当って、手作りの方がうれしい……よね?」
川崎さん:「あっ……う、うん。えっと……そうだね」
ぎこちない。めっちゃ気まずそう。
その後すぐ、「じゃあまたね!」と逃げるように立ち去った。
そして残された僕の机には――
石田が残した言葉があった。
「あの『LOVE』弁当、お前の手作りって誤解されてるぞ」
→【本日の結論】
・ケチャップの破壊力は恋愛感情ではなく、警戒心を刺激する
・“母の愛”が“自作アピール”に変換されると、ホラーに化ける
・川崎さんの笑顔(引きつり気味)は、今日も宇宙に眩しかった
夜、ベランダで星を見ながらひとり呟く。
「恋は……オムライスでは煮詰まらない」
明日は、初心に帰って“さわやか系男子”の演出を試みる予定。
あいさつ、笑顔、そして天気の話から始めてみよう。
たぶんそれが、一番むずい。