【8月6日(水)晴れときどき銀河系】
昨日の夜、僕は“それ”を書き上げた。
タイトル:
『孤独な銀河に咲く片想い』
内容は以下の通り(一部抜粋):
星の数だけ君を見つけ
月の裏側で僕は泣く
恋は重力
君はブラックホール
でも僕は落ちるしかないのさ、君に
我ながら、震えるほどに深淵。もはや宇宙。
◆作戦その5:ポエムを“偶然”落としてみる
ターゲット:2年B組の川崎さん(読書好き・控えめ・でも笑顔が太陽級)
場所:廊下、昼休み直前、すれ違いざま
準備:ポエムをノートに書き、わざと教科書に挟む→落とす→拾われる→運命の始まり(予定)
作戦決行。
僕は歩く。彼女も歩いてくる。
距離8メートル、秒速1.2メートル。
交差まであと――6秒。
僕は“うっかり”落とす。絶妙な角度でノートが床に滑り落ちる。
川崎さんの視線が、ノートに吸い寄せられる。
拾う。めくる。目を通す。
……そして、
笑った。
いや、正確には「吹き出した」。
しかも、「ぷっ……ははっ」っていうやつ。
天使の笑顔とかじゃなくて、「うわヤバ……」って顔だった。
その直後、友達と小声で何か話してた。
耳の良い僕には聞こえてしまった。
「“恋は重力”ってなにww」
→【本日の結論】
・ポエムで女子の心を掴むのは、宇宙開発より難しい
・恥ずかしさで魂が2回くらい脱けた
・でもちょっとだけ、「何かが始まった」気がした(悪い意味で)
放課後、屋上で風に吹かれながら、ひとりつぶやく。
「笑わせた、ということは、感情を動かしたってことだ……」
「つまり俺は、ゼロじゃない……!」
こうして僕は、ひとつ失敗し、
ひとつだけ、思い出を増やした。
明日は「弁当男子」で攻めてみる予定。
母に頼んでオムライスを作ってもらおう。ケチャップで「LOVE」と書いてくれるように。
……待ってろ、川崎さん。
恋の重力は、まだ終わっていない。