プロローグ
ああ、嫌な夢を見た。
大きな地震が起こって・・・
古代の恐竜みたいなのが建物に侵入してきて・・・
それから・・・
・・・。
「(色んな事があった!)」
周りのザワザワしている雰囲気を感じ取り、そこで品質管理課の課長[須沖仁]はハッと目を覚ます。
「(夢・・・じゃなかった・・・)」
目が覚めたそこは羽曽部食品の本社棟にある大会議室だった。
このとんでもない世界に会社の敷地ごと298名の従業員が転移してしまい、プテラノドンを率いた異世界人[慈愛]が現れた。生き抜くためにサバイバル生活を余儀なくされ、数日間を皆で過ごし、再び大会議室に会社の全従業員が詰め込まれる様に集められていた。
―――この異世界から帰還する方法―――
それを慈愛から従業員に説明するため、会議が開かれていた。
仁は、この重要な話の最中、会議室の一番後ろで壁に寄りかかるように座り、あぐらをかいてウトウトしていた。
しかし、目が冴えわたると、何故か全員が振り返り仁に注目していた。そして会議の上座に立つ慈愛が、堂々とした風貌で仁に指をさしていた。
「え・・?あ、少し寝てしまっていたようで・・・」
寝ていたことを弁明しようとした仁の言葉は、振り返っていた数人の従業員の声にかき消された。
「須沖課長、皆のために頑張ってください!」
「(はぁ?寝てる場合じゃないってことか?こんな大勢の前で公開処刑みたいなこと大声で言うのはやめてくれ、恥ずかしいわ)」
仁はそう思いながら気まずそうに頭を掻き、愛想笑いを浮かべた。
―――しかしそうではなかった―――
「英雄須沖!」
「課長なら必ずできますよ!」
何なんだ・・・。皆が仁に向けて声を掛けている。何か俺が期待されているのか?
仁の隣に座っていた同じ部署の部下である原田は、仁が口をポカンと開けて理解していないことを察し、手で口を隠すようにして仁の顔に近づき、耳打ちした。
『須沖課長はスキル持ちですよ。元の世界に帰るための方法を探しに旅に出るんです。羨ましいです!』
「なんだってっ!!!」
仁は驚愕の声を上げた。スキル持ち?元の世界に帰る方法を探す旅?そんな重要な話を自分が聞いていなかったのかと、自分自身に愕然とした。
仁は大きな声を出して驚いて立ち上がると、更に皆の注目を集めた。
多くの視線が向けられる雰囲気に、仁は顔が自然と強張り、嫌な汗が額から頬を伝わり流れ落ちた。
ついこの間までは、平凡なサラリーマン生活を送っていた筈だった。
特に趣味もなく家と会社を往復する日々を過ごしてきた。
おっさんと呼ばれる年齢にまで年は重ねたが、仕事では部下にも恵まれ、悪くない環境で日々を暮らしていた。
何も無い日々、平凡である日々が幸せだと感じていた日々であった。
それが、なんでこんな事になってしまったのか・・・。
始めまして。蒼木しのです。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
趣味で合間に小説を書いています。
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