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7話 TCGは予想外の出会いが待っている

今話でオリジナルTCGが出てきますが、そういう世界観と思ってください

メインは灯矢です

温度差・・・

俺と灯矢は週末、とある場所に来ていた。

男子高校生が好きな遊びとは何だろうか?カラオケ、スポーツ、テレビゲーム?

色々あるが、今ウチの高校で最も流行しているのが、トレーティングカードゲーム(TCG)だ。

その中で最もメジャーなのがジンリード(Jinn Lead)TCGだ。


「私の『アブソーブ・ハイドラ』はフレイム属性のカードでダメージを受けない!次のターンで終わりだ!」


ショップ大会決勝戦も終盤に近付いてきた。

この決勝戦の両者はかなり強い。片や俺に勝った相手を瞬殺したヤツ。

そして、もう一人はフォールこと、クラスメイトの秋林勝一。


三度の飯よりもカードゲームだと豪語する生粋のカードゲーマーだ。

彼は黄金の虎のカード―『ゴールデン・ストライプ・タイガー』を従え、対戦相手を見据える。


「『アブソーブ・ハイドラ』は確かにフレイムデッキとは相性は悪い。それでも俺が勝つぜ!」


「面白い!」


そう、俺と灯矢はジンリードの新弾を受け取りにカードショップにやってきていたのだ。

ちなみに勝一は最初からショップで大活躍をしていた。


「コスト6マジック『バースト・メテオ』!プレイヤーとジンそれぞれに6点のダメージを与える!」


「直接火力か。だが、それでは私の10点のライフは削り切れない!」


対戦相手は無意味だと言い切る。だが、勝一フォールの闘志は燃え盛っている。


「行くぜ。『バースト・メテオ』で俺の場の『ゴールデン・ストライプ・タイガー』に6点ダメージ!」


「自分のカードにダメージ!いや、まさか・・・!」


「そうだ!『ゴールデン・ストライプ・タイガー』は1ターンに1度だけ、自分に与えられるダメージを相手に反射する!『ダメージ・リフレックション』!」


「しまった・・・!」



「ショップ大会は優勝者はフォール選手です!」


拍手が周囲に鳴り響くのをバックに灯矢が口を開く。


「凄い!秋林君が勝った!」


「あぁ、スゲェ戦いだったな」



手に汗を握るとはまさにこのこと。

これは祝わざるを得ない。


「勝一、おめでとう!」


「準一、ここではフォールだってんだろ。まぁ、ありがとな」


あ、そうだと勝一は付け足す。


「一戦、闘っていかないか」


「今回はやめとく。周りにお前と戦いたそうにしている奴がたくさんいるし。それにデッキを根本から見直したいからまた今度な」


ぶっちゃけ、今のノッている勝一に勝てるイメージが湧かん。


「おぅ、また月曜な!」


じゃあ、次の場所に行くかと灯矢の方を見やる。

すると、帽子を目深に被った男性と話しているようだった。


「“アーヴス・エイジ”のボックスはここでは売り切れたみたいですよ」


「そうですか・・・ありがとうございます。他のショップを当たろうかな・・・」


ラフな格好の茶髪の男性が残念そうに肩を落とす。

よく見たら2.5次元っぽいイケメンだ。

一房、肩口からまとめた茶髪を垂らしているのがイケメン度を更に増加させていて、ビビる。


「あ、準一。この人、新弾のボックスを買いたいんだって。特にボックス特典のカードを手に入れたいみたいだよ」


「初版しかつかないヤツかー。シングルで買ったらどうですか?いや、高すぎですかね?」


今回の特典カード、汎用性が高くてシングルカードの値段も高いんだよなぁ。


「そうですね。高額ですから、シングルで買うと他のカードを購入できなくなりますからね」


なるほどな。見て見ぬフリはできないよなぁ。

灯矢と目が合う。


「では、俺達とボックスが売っている所を探しに行きましょう。だよね、準一」


「ああ。早速探しに行こうぜ。ぶっちゃけ、俺も2箱目が欲しかったんだよなー」


小遣い的に厳しいが、デッキに採用しないカードを売れば、元は取れるだろう。


「ちょっと待って『ドリーミィ・シルフ』のカードを持っているの!?よかったら、トレードを・・・」


「ごめんな」 「申し訳ないけど・・・」


「・・・そうですね。私が同じ立場でしたらそうしますし」


あんな汎用性の塊、手放す訳ないだろ。


「ちゃんと買える店を見つけますって。この街は俺の庭ですから。マイナースポットも知っていますよ」


「それは心強いですね」


「準一、こういうの得意だもんね」


カードに限らず、食料品に、家具、ペットまで何でも知っているぞ。


「ではお願いしますね。ええと、灯矢さんに準一さん。私の事はカエデと呼んでください」


カードゲーマーネームってヤツかな?


―――


道すがら、スーパーや小さなカードショップといくつかのお店を巡っていく。


しかし―――、


「全然、売っていないね」


「そうだね。ここまでとは…。長い時間付き合わせて、悪いね」


色々巡る中で俺達の口調は次第に砕けたものになっていた。


「気にすんなって、まだ本命は残っているからな」


今までのは本命に行くまでの通り道なのだ。


「それはいいね」


「ところで、新弾のボックスを買ったら、何か組みたいデッキはあるの?」


それは俺も気になるな。何となく特定のカードを狙っているわけではない気がするんだよな。


「ん、組むデッキは考え中かな。今回はイースターエッグ―隠し要素を探すことが目的なんだ」


「まだあるのかよ、隠し要素!」


このTCG、何故か隠し要素が多いんだよな。

しかも世界観と連動しているから、考察界隈が盛り上がりやすいのだ。


「ああ。君たちはもちろん、『ガイアス・イデア・ドラゴン』は知っているね」


「ジンリードの背景世界で最初に召喚されたっていうユニークジンだよな。最初は世界大会優勝賞品のカードだったんだよな」


その後、レプリカとしてパックの最高レア枠で出回り、高額カードの代表格になった。

世界観的に重要だし、その扱いはわかる。だが、このカード誰も使ったことがないのだ。


なぜなら―――、


「とても強いんだけど、使用条件があるんだっけ?」


「その通り。[アーヴ・ルクセン]並びに[リリア・ルクセン]のみ使用可能、という誰にも使用させる気のない条件・・・。一時期は記念カードと思われていた。だが、考察コミュニティではイースターエッグじゃないかとなってね。色々意見交換の末、私は今回の“アーヴスエイジ”が最重要ピースという訳さ」


早口っ!こやつ、考察ガチ勢だったか・・・。


「もし見つけられたら凄いことだよ。応援しているね」


「ああ。だからこそ、この新弾は是が非でも手に入れたいんだ」


そうこうしているうちに、次の目的地の小さなおもちゃ屋までたどり着いた。


「なるほど、個人経営のおもちゃ屋なら人の出入りは少ない。狙い目だろうね」


「フフフ、予想は当たったようだな、誉めるがよい」


「カエデ、早く行ってきなよ」


流された・・・。


「ではお言葉に甘えて」


カエデを先頭に店内に入る。レジのすぐ横には“アーヴス・エイジ”のパック。




「見つけたっ!すみませーん、この商品を1箱お願いします」


こうして、カエデは無事に1ボックス入手できた。

だが、そこで売り切れ。俺達も買うつもりだったが、残念だ。



「2人ともありがとう。無事に入手できたよ」


ほくほく顔が可愛いんだが・・・。これは女子にモテそうだ。というか確実にモテている。

帰ろうと後ろをカエデが後ろを振り返ろうとしたその時―――――、

「痛ってぇなぁ。どこに目を付けたんだ」


強面のがっしりとした体格の男が其処にいた。


いるのは彼1人ではない。


「大丈夫スカ、兄貴」


「兄貴、一張羅が汚れているんじゃないスか」


取り巻きは2人。


「あ、スミマセン。不注意でした」


カエデは慌てて平謝りする。


「俺様の一張羅が汚れちまったじゃねぇか。どうしてくれんだ、オイ!」


「ヒッ」


怯えるカエデに対し、チンピラはグイっと汚れと手にしていた飲み物を見せつける。


「その汚れ、飲み物の色と違くないですか?」


これはイチャモンですねぇ。


「あぁん!テメェ兄貴に口答えする気かぁ!」


ドォンとケリを入れてくる。

怪人とかに比べると遅いので、喰らった振りをして吹き飛んでおく。

ついでにクルリと背を向け倒れこんでおいたぜ。


これで視界から外れたはず。


「準一さん!」


ボトンと何か落ちた音がする。

動揺してボックスを落としたのかな?


「フン、いい気味だ。ま、慰謝料代わりにコイツをもらっておくか」


「コレはダメ!」


「うっせーんだよ!」


バシン!という叩く音が周囲に響く。


「そんな不当な事はさせない!」


「灯矢さん・・・!」



多分、イイ感じにガードしたな。

次もう一発というところだろうか。


だけど、コッチの準備は既に済んでいる―――。


「警察を呼んだ。暴行罪に恐喝罪は確定だぜ」


ついでに録音もさせてもらっている。

更にダメ押しだ。


「ハイ、チーズ」




写真も撮ってやった。

あ、顔を隠しやがったな。

でもその隙に2人と距離を取れたから良しとしよう。


「テメェ!」


「不味いスよ、兄貴」


「ち、ずらかるぞ」


猪もかくやとばかりにチンピラ達は逃げ出していった。

もちろん、ボックスも無事だ。

「大丈夫かい、2人とも」


「しっかりガードしたから大丈夫だよ。準一もああ見えてワザと吹き飛んだと思うし大丈夫だよね」


「まぁな。中々良い飛びっぷりだったろ」


灯矢と一緒にいるとこういう場面に出くわしやすいから慣れたんだよなぁ。

今は最適解で動けるぜ。しかも怪人の速さが基準になってきたから動体視力は爆上がりだ。


「本当におもしろいね、キミ達は」


その後、やってきた警察に事情と写真と音声を見せながら説明した。

どうやら、常習犯だったらしくすぐに事情を聴きに行くそうだ。

それから俺達はハンバーガー屋に行ってパックを開封。

カエデは端末を弄って、何と「リリア・ルクセン」の使用権を獲得!

ジンリード的に一大事だぞ、コレ。

みんなして、めっちゃテンション上がった。

ついでに彼は懐に忍ばせていた『ガイアス・イデア・ドラゴン』を見せびらかしながら対戦。羨ましいなぁ。

ちなみに『ガイアス・イデア・ドラゴン』は超パワーカードだった。

環境かわるぞ、これ。

リリア版だと弱体化しているのに・・・。



―――――


灯矢さんと準一さんを見送り、私は帰路についた。

無茶苦茶な1日だったけど、楽しかったな。

しかも、リリアの使用権の隠し要素を解放できたのも満足度が高い。

充分遊んだし、明日からは仕事に戻らないと。


「それにしても、ちょっと苦しくなってきたな」



背中の紐を緩め胸元にかかる圧力を減らす。


これで一息つけた。


「あぁ、キツかった。私、よく耐えれた。これなら男役も無理なくこなせるよね」


ベッドにボフッと横になって目をつぶると、今日の事が思い出される。

それは。チンピラの拳を防いだ彼の姿。


「それにしても、あの時の灯也さんカッコ良かったなぁ・・・」



今日、2人が出会った人物が今を時めく女優、守屋楓であった事を知るのはもっと先の未来。

明日も18時台に投稿予定です

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