3話 始業式前の学校はテンションが上がる
今回は短めです。
次の日!
いつもより早めに登校してみた。1時間前にな。
淡海さんとまた喋れると思うとテンションが上がっちまうぜ。
当然、一番乗りだと思ってガラリと教室の扉を開けた。
「おはよう、基成くん」
「淡海さん、速ぇー!あ、おはよう」
淡海さんは勝ち誇ったかのようにどこか不敵に微笑んでいる。
「あなた、昨日言いかけた事があったでしょう?念のために早起きして来て良かったわ」
「聞こえていたんだ。なら、聞いていっても良かったのに」
「そうしたかったのは山々だったけど、できる限り早く報告しないといけなかったから」
怪人か。
「例のヤツね」
「ええ、その話は守秘義務があるから答えられないからそのつもりでね」
怪人に対する何らかの組織があるのかな?
「好奇心は猫をも・・・って訳ね。まぁ聞かないでおくよ。ああでもコレだけは聞きたいかな。アレの名前って”ヘルムウェイカー:エキュア“で合ってる?電子音が聞こえちゃったからさ」
「・・・聞こえたのなら仕方ないわね、それで合っているわ、早速本題に入りたいのだけど」
苦虫を噛み潰したような彼女の表情、
伝えたくなかった事は何となく分かる。“ヘルムウェイカー”は都市伝説から取ったって事だからな。
“ヘルムウェイカー”は50年位前に政府に救う闇と戦ったとされる都市伝説だ。
「ゴメン。名称だけはハッキリさせておきたくて。じゃあ、早速話していこうか」
アイツの難攻不落さを。
「まず、前提を2つ話させてもらう」
彼女は真剣な面持ちでコクリと頷く。
「1つ目、楠灯矢は魅力溢れるヤツで、とてつもなくモテる。淡海さんならよく分かるよな」
「そうね。楠君の魅力を話そうとしたら、少なくともホームルームまでかかる位にはね」
「それは今は止めておいて欲しいな。2つ目は、俺と灯矢は昔からの幼なじみで親友って事だ。で、ここからが本題。中学卒業までに惹かれたヤツ、いないと思うか」
「いないはず、ない・・・よね」
目を見開き、おずおずと聞いてくる。
「何人くらいいたの?」
俺は左手の指を3本立てる。
ホッと一息を吐く淡海さん、甘いぜ。
0の形にした右手を出す。
「三・・・十?、30!?」
呆け、焦り、驚愕、その移り変わり、実にマーベラス!
その絶望顔が見たかったァ!(顔芸)
「厳密には32~37人位かな?端数はまぁいいか。もう1個重要なのは全員無茶苦茶美人って事だ。みんなでアイドルグループが作れるレベルだな」
幼なじみから、旅行先何でもござれだぜ。
しかし、幼なじみ(♀)よ。意識されないからって敢えて離れてイメチェンするって無謀だと思うぞ。
今だって俺、淡海さんにテコ入れする気だし。
「そんなに・・・」
「それだけ競争率が高いって事さ。加えてアイツに好かれるには容姿は関係ないって事だな」
「それは寧ろ好都合ね。容姿を気にしないで、人柄を見てくれる人こそ相応しい。やっぱり私の見立ては正しかった」
したり顔で頷く。淡海さんは自信家だなぁ。
というか、デジャブが・・・。
「まぁ、みんなそこから距離が詰めれないんだけどな。アイツの恋愛に対する壁、距離感はとてつもなく分厚く、長い。どうするつもりだ?」
「それは・・・」
口ごもる彼女。
今のままではジリ貧なのは自分自身がよくわかっている筈だ。
ただでさえ、焦野さんと牽制しあっているから余計にな。
「難しいよな。だからこそ俺は少なからず助けになれる。それが俺の恩返しだ!」
決まった。あ、考えこんで見ていない。
カッコよく決めたので、もうちょっと反応してほしい。
「なるほど、あなたと組んだ方が良さそうね。あなた不真面目な割にはやることはしっかりやっていて要領が良いものね」
「意外と見てくれているんだな、流石、淡海さん」
「はぁ。あなた、かなり目立つからね。もう少し真面目にやった方が良いわよ」
「それはどうも。これでも真面目にやっている方だよ、常識枠だからな」
「それで?まぁ良いわ。とりあえず私の連絡先を渡しておくわ。定期的に連絡する必要がありそうだからね」
淡海さんがLIME画面のスマホを差し差し出す。
「んほおぉ、これが・・・。(ドラゴンマニア風)これはクラスの皆が羨ましがるよな。そう言えば淡海さん、灯矢とは連絡先の交換はした?」
「うっ、それは・・・」
乙女か、乙女だわ。
「そう言うところだぞ、淡海さん。連絡先の1つや2つさらっと交換せな」
「みんなの前だと恥ずかしいし」
またそういう反応をする。
廊下で足音が聞こえてきた。もうこんな時間か。
「と、とにかく頼んだわよ」
今話もお読み頂き、ありがとうございます。
明日も18~19時頃に投稿予定です。