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2話 特撮ヒーローは奥手

3行で分かる前回のあらすじ。

スーパーで特売品を漁る俺、基成準一。

茶色の怪人登場。瓦礫に押し潰されかけている俺!

クラスメイトが特撮ヒーローになった件。(New)



という訳でスーパーをリングにしてヒーロー対怪人のマッチアップ。


『グォオオオ!』


咆哮とともに青いヒーローに飛びかかる怪人。

それを淡海さん、音声的に”ヘルムウェイカー:エキュア”がフワリと避ける。

彼女の周囲の重力が軽いかのようだ。

避けつつも、更に高速で連続蹴りを放つ。


「甘い」


だが、怪人にあまり攻撃は届いていないようで怯まずに拳を固めている。


しかし———、



ドドドォーン!


エキュアの足先から火花が舞ったかと思うと、小規模の爆発が怪人の装甲から起きた。


『グゥウ・・・』


ガクリと膝をつく怪人。

エキュアは間を取り、掌を掲げる。

すると、掌の前に水球が作られてく。


「ハァ」


凄まじい勢いでジェット水流が放たれ、怪人は仰け反る。

さしもの怪人もやられているわけではない。

踏ん張るように、地面を蹴る。

すると、茶色の金属の槍が地面から飛び出てヒーローを襲う。


「チッ」


水流を止め、半身を捻るように避けた。

互いに間合いを取る2人。

さながら西部劇のガンマンのようだ。どちらか先に動いた方の負け。


そこで、俺はふと気づいた。

あの槍って銅でできているのか?

『ドウダ』ってあの叫びは”銅だ“って事だったのか。

つまり、あれは銅の怪人。

淡海さんも“ブロンズプレヴイクター”って言っていたじゃないか。

なら、俺ができることもある。


俺はポケットに手を突っ込み、中身を投げたーーーーーー



『ドウダー!』


思わず怪人は目で追ってしまう、お釣りのお金、3枚の10円玉硬貨を。

10円玉は銅でできている。

だからこそスーパーを狙ったのだろう。

工場とか狙った方が良いと思うんだけどな。

目で追うのは勝手だが、大丈夫か?

ヒーロー相手に目を離すなんて致命的だろ。


【Hydro Full Drive!】


床をタン、と蹴ると足元から爆発が起き、エキュアの体を加速させる。

その勢いのまま拳を振り抜くいた。


【Burst Impact!】


拳が怪人に当たり、ドォオオンと爆発が起きる。

実に怪人である。特撮のお約束だからな。

これで一件落着だぜ。

今回のMVPは10円玉。持っていて良かった。


「基成くん、無事?よくアレ相手に無謀なことがができたわね」


瓦礫をどかしながら見知った声で話すヒーロー、淡海さん。


「大丈夫。でも何で淡海さんが特撮ヒーローやっているの?」


「特撮・・・。あなたがそれを知る必要はないわ」


一瞬、狼狽えるが懐から煙草サイズの小さな筒を取り出す。


「今日の事は忘れなさい」


筒から出る煌々とした光が視界を覆うと睡魔が襲ってきた。


こうして、最初の怪人の襲撃が終わったのだった。

そう、最初の。



~~~


薄明かりを感じて瞳を開ける。


「どこだ、ココ?」


どうやら、公園のベンチに座っているらしい。

街灯がぼんやりと辺りを照らしている。

さっきまでスーパーにいたけど、なんで公園に来ているんだ?

確か、淡海さんが特撮ヒーローになって・・・。


「基成くん、目が覚めたかしら」


変身した淡海さんが腕組みをして佇んでいた。


「淡海さん、あの後はどうなったんだ?・・・ってアレ?」


謎の光を浴びて記憶を消されたんじゃなかったっけ?


「その・・・」


「まさか、俺に記憶改竄耐性があったのか」


流石、俺。非日常への導入って訳か。


「いいえ」


即答で否定された。

それから顔をフイと背けられた。


「その、言いにくいんだけど・・・」


次にこちらを向いた時は生暖かいような憐れむような表情になる。

一拍、置いた後歯切れが悪そうに言葉を続ける。


「寧ろ、貴方には記憶操作が効きすぎちゃって・・・。まさか、あんな事になるなんて・・・」


「え、ちょっと待って。その反応何があったの?」


むっちゃ、気になるし怖いんだけど。


「ともかく、貴方の記憶は元通りにしたわ。わかった?」


「何があったか教えて欲しいんだけど」


「わかった?」


特撮マスクをグイと近づけてそう宣う。

圧が強い・・・。


「はぃ」


「納得したようで何よりね。記憶操作ができなかった以上、今日あった事は心の内に留めておいて。もし・・・」


「大丈夫。何も話さないから、安心してくれ」


流石にクラス委員長が特撮ヒーローをやっていたとは、誰も信じないだろうし。


「それに俺は、人が隠したいと思っている事を暴くのは人を傷つけるだけだと思う。俺はそういう事をする人間になりたくない」


「・・・意外。いえ、そういうあなただからこそ、楠くんとうまくやっていけるのかもしれないわね」


惚れ直すなら、今の内だぜ。


「それから、1つお願いがあるんだけど・・・」


彼女はそう言葉を区切ると、ネックレスのキューブを取り外して変身を解いた。歯切れが悪いな。


「あなた、楠くんと仲が良いのよね?」


ん、まさか。


「当然、俺達は保育園の頃からのマブダチだからな」


「ねぇ、基成君。あなたなら楠君との仲を取り持ってくれるよね」


上目遣いでそんな事を宣った。


「赤面プラス上目遣いなんて卑怯すぎだろ!」


「え、そう・・・」


しょぼんとして、がっくりうなだれる淡海さん。

だか、安心してほしい。

なぜなら協力自体に俺は吝かではないからだ。


「安心しろ、協力するから。何せ命の恩人の頼みだからな。受けた恩は返すのがモットーだからな」


「あ、ありがとう」


たどたどしくてカワイイ。


「じゃあ、早速作戦会議といくか。ヤツはマジでモテる。昔から・・・っておオイ!」


そさくさと軽やかに離れていく淡海さんが視界に入る。


「ではこれで。明日はよろしく」


「お、おう」


まぁ、いっか。

今まで全然喋れなかった美人な女子と喋れたし。

矢印は完全に灯矢だけどな!

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