1日目(2)
しばらくすると、チャイムの音と共に担任の先生が教室に入ってきて、生徒たちは先生の姿を見るなりそそくさと自分の席へと帰っていく。
そんな足音を聞きながらも、僕は微動だにせず突っ伏した状態のまま、窓の外を見つめ続ける。
「はいおはよう。今日はまず初めに転校生を紹介するぞ」
先生が気だるげに言った一言で、先生の態度と逆に、教室中が一瞬で歓喜に満ち溢れた声で埋め尽くされる。
かくいう僕も自分には全く関係の無い事だとは分かっていながら、少しだけ心が浮ついてしまう。
「女の子ですか!?」
「入ってきていいぞ」
教室で1・2を争うお調子者の田中が、みんなの気持ちを代弁するかの様な質問をするが、先生は無視と言う答えを返すと、転校生が外で待っているのか、ドアの方に顔だけを向けて教室に入るようにと声をかける。
僕が机に突っ伏すのを止めて頭を持ち上げると、隣の席に座っている島田さんが不満そうな顔をしながら僕の方をじっと睨みつけているような気がする。
そんな気のせいをしていると、僕の考えをかき消すようにしてガラガラっと教室のドアが音を立てて開く。
すると、腰辺りまであるような透き通った綺麗な髪を交互に揺らしながら、美少女を再現したかのような女の子が教室の中へと入ってくる。
そのあまりの可憐さに皆が言葉を失って、先程までうるさかった教室の中がみるみるうちに静まり返り、教室中は一瞬で緊張感に包まれる。
「それじゃ、これで自己紹介してくれ」
その空気を壊す様に、先生がチョークを渡して転校生に自己紹介を促す。
それに対して、転校生はコクリと頷いてチョークを受け取ると、僕達に背を向けるようにして黒板に文字を書き始める。
『柊 雫』
黒板につたない字でそう書いた転校生は、今度は黒板に背を向けて初めて声を発する。
「ヒイラギ シズクです。よろしくお願いします」
柊さんはうつむいたまま、鈴の音のような凛とした声で挨拶をする。だが、柊さんの言葉には誰も反応することが出来ずに、皆は彼女の方をただじっと見つめ続ける。
そんな静まり返った教室の異様な空気を見かねてか、先生は頭を掻きながら、本来の目的であるホームルームに移行しようと声を出す。
「そうだな。柊」
僕は急に聞こえてきた先生の何気ない言葉に、ピクリと体を動かして反応してしまう。
その仕草に気が付いたのか、先生は教壇の上でニヤリと笑みを浮かべると、僕の方を指差しながら言葉を繋げる。
「それじゃ、あいつの席の前に座ってくれ」
先生は柊さんにそう伝えると、今度は僕に向かって、教室の後ろにあった明らかに不自然な机を用意する様にと、身振りだけで指示を出す。
「……あっ」
僕が先生の指示に従って、渋々自分の席から立ち上がって机を取りに行こうとすると、その瞬間。下を向きっ放しだった柊さんの口から小さく声が漏れる。
静まり返った教室の中でも聞こえてきた、その零れ落ちた声を不思議に思い、僕は足を止めて柊さんの方へと視線を送る。
そこには柊さんが僕の事を見つめながら驚いた様子で、口元を手で覆いかぶして自分の口を塞いでいる姿があった。
そして、彼女は直ぐに僕の横の席に座っていた島田さんの方へ視線を動かすと、そのまま茫然と立ち尽くしてしまう。
柊さんのその表情や声の正体が何かは分からなかったが、埒が明かないこの状況を終わらせるために、僕は先生の指示通りに転校生の席を用意し始めた。
昔描いた話をチェックして投稿してるんだけど、文章の書きかたあまりにもあまりじゃない?
作品作りから身を引いていた期間が長いので、どうすれば良くなるか見当もつかないけど、ゆっくり感を取り戻していこうと思ってたんだけど、こーれは死活問題。教えて偉い人