1日目(14)
「んっ……なんだこれ! 美味しい」
僕はカレーを一口頬張ると、自然とその言葉を口にしてしまっていた。
僕の反応を見て、対面に座る雫はニヤニヤと嬉しそう僕の顔を見つめてくる。
だが、そんな事に気を配る余裕も無いまま、僕は一口もう一口とカレーを口の中に運んでいく。
「本当に美味しいな!」
「そっかそっか、良かった良かったぁ」
料理の感想を聞いて雫も満足したのか、嬉しそうに返事をすると、彼女も自分のカレーを食べ始める。
「それで? これからどうするんだ?」
「どうって?」
水の入ったコップを口に近づけながら聞いた僕の質問に、雫もまたスプーンを銜えながら不思議そうに首を傾げて、気の抜けた声で返事をする。
「何か理由があってきたんだろ?」
「ああ、それね。まあ、大半は叶ったって言っても良いんだけど……」
雫は言葉を途中で止めると、考え事をしているのか真剣な顔になって、僕の顔をマジマジと見つめて話を続ける。
「もうちょっとだけ、この時間に居てもいいかな?」
「それは別に良いんだけどな。こうやって美味しいご飯も食べさせてもらってる訳だし」
両手を自分の前で合わせて頼み込んでくる雫の姿に、僕はカレーをスプーンですくいながら何でもない様に了承をする。
「えへへ。そっか、ありがと」
返答を聞いた雫は、嬉しそうな声を出して食事に戻る。
だが、やはりこの時間に来た理由を悟られたくないのか、似合わない愛想笑いを浮かべてきて、僕にはそれが何故だか無性に腹立たしく感じてしまった。
僕は自分のその感情に蓋をする様に、カレーを飲み込んで別の会話を始める。
「じゃあさ、明日買い物に行こうと思ってるんだけど、何も予定が無いなら付き合ってくれるか?」
僕の言葉を聞いた雫は目をキラキラと輝かせながら、前のめりになって嬉しそうな笑顔を浮かべてくれる。
「うん。行く!」
その雫の顔はやはり先ほどの物とは違い、僕の心が大きく落ち着いていくのが自分でもわかる。
「なら、お昼から行こうか。それまでには起きろよ」
「はーい」
雫は子供の様な返事をすると、椅子に座り直してパクパクと食事に戻っていく。
その光景がなんだか愛らしく見えてしまっていると、雫が思い出したかの様に僕の顔を見て質問を飛ばしてくる。
「あ、それより、私今日どこで寝たらいいかな?」
雫のその何でもない様に言った一言は、僕が考えるのを放棄していた事の核心をしっかりと突いてくる。
「そうだな、家に客室なんてないし……」
僕は部屋の中を無駄に見回して考える。
「父さんの部屋は流石に駄目だろうし、僕がリビングで寝るとか、かな」
そんな独り言を呟きながら考えていると、雫から一つの案が告げられる。
「翔君の部屋で一緒に寝ちゃダメかな?」
「へ?」
雫から出た驚きの発言に、僕の思考は停止を告げた。




