騎士団長と姫の再会
この話の下書きをしたのは九月一日でした。
侍女が、アリア姫の部屋の前に立ちました。
「失礼いたします」と言ってカーテンをくぐり、部屋に入ります。
アリアは、小型化した竜王を膝に乗せ、竪琴を奏でていました。
「姫様」
呼びかけられて、竪琴の綺麗な音が止まります。
「陛下がお呼びです。ライオネス卿がお戻りになられました」
エレミヤは、アラモアを前に立っていました。
やっぱりアラモアの方が背が高いです。
「まあ、旅の話は後でゆっくり聞かせてくれ。とりあえず、休んだ方がいいな」
「いや。俺よりも弟子を休ませてやってはくれないか。俺は、姫様の下へ…」
アラモアがそこまで言った時、一陣の風が起こりました。
大きな鳥が羽ばたくような音が聞こえ、見ると、バルコニーには翼を優雅に揺らすアリアの姿が。
頭の上には、竜王がいます。可愛い。
「アラモア…」
「姫様…」
久しぶりの再会。
「アラモア~」
なんかフワフワしてキラキラした背景がアニメなら出ているであろう。
ちょっと低空飛行しながら、アリアはアラモアに抱きつきました。
「おかえりなさい。ケガはない?」
「ただいま。我が主。怪我は無い」
微笑みを浮かべ、愛おしげにアラモアもまた、アリアを抱き返す。
が、唐突にその美しい顔に影をおとしました。
「それよりも、俺がいない間に御不幸が…。傍にいてやれずに申し訳ない」
アリアは瞬時に、彼が何を言いたいのか悟り、手を振って否定の意を告げました。
「大丈夫だよ。
確かに、変わった事は大きすぎたけど、私は、独りじゃなかったから」
「だが聞けば、ミィ(ラミエル・フェアリーの愛称)と奥方(アクアの呼び名)を襲ったのは…。
あの時の…あの日の…」
アラモアは、左目を抑えました。
「“陰の一座”」
アリアは答えました。
そして、アラモアの言う「あの日」に負った傷跡たる左目に、眼帯の上から触れました。
それはアラモアが、陰の一座からアリアを護った時に付けられたものです。
その傷をきっかけに、アラモアは、自分が弱いと判断し、修行の旅に出たのです。
アリアが、その傷を治して眼をまた開かせようと言った時、アラモアはこう言って断りました。
「これは、俺の弱さの象徴であり、俺がアリア様を護ったという象徴だ。
だから、傷だけ塞いでくれればいい。開かないままで構わない」
「さて、暗い話はおしまいにして、行こう!ホラ、この竜王も紹介してあげる!」
竜王は「ギャッ」と、高い声で返事をしました。
普段は人見知りの激しい竜王ですが、アラモアのことは気に入ったようです。
「ホラホラ!いっぱい紹介するよ!
融流くんとか、輝くんとか、隊長とか、ルカとか、ホーリーとか、それから…」
アリアとアラモアは、手を繋いで出ていきました。
声が、だんだんと遠くなっていきます。
エレミヤは、そんなふたりの後ろ姿を見送っていました。
アラモアさんが、思っていた以上に男前な野郎になっていました。
次回、アラモアとルカが対面しますよ。