闇に墜ちた魔術師
最近ジャンプスクエアを立ち読みしました。
読んだのはdグレイマンです。
しばらく見ないうちにユウくんがあんなことになってました。
知らない人は気にしないでもイイ前書きでした♡
グイルは近くに来た黒い存在に気がつきました。
時間が止まったのは、それの仕業とわかりました。
それは、かぶっていた黒いフードを取り、長い黒髪をフードの外に出しました。
「失った命は二度と戻りません」
それは、グイルの耳元で囁きました。
「憎いですか?貴方の大切な両親と、胎内の妹を奪った彼らが」
グイルは、生まれるハズだった子が女の子だっただったことにはツッコまず、深くうなずきました。
「憎い」
それがクスリと笑った音がしました。
「力が欲しいですか?」
「欲しい」
グイルは振り返り、それを見上げました。
自分よりも暗く黒い双眸を見返します。
「彼らは魔法界という世界から来ました。そこには、強い魔力を持つ者がいます」
微笑みを絶やさずに、それは続けます。
「その方は、貴方の元からある魔力に合っていますから、貴方にその魔力を与えることができます」
それ、悪魔は思わせぶりに笑いました。
「どうすればいい?」
悪魔は「簡単ですよ」と言うと、教えました。
「俺と貴方が契約を交わせばいいのです。貴方は俺に力を求める。そして」
辺りの空気が濁りました。
「その力の犠牲となる存在と、代価を俺にくれれば契約は完了です」
世に言う悪魔の誘惑に、グイルは立ち向かうことなくすぐに受け入れました。
「何をやればいい?」
「犠牲は、貴方の両親と妹を殺した者の魂と、貴方に魔力を与える為に死ぬ魔術師です」
死ぬ魔術師とは、悪魔がさっき言っていた“強い魔力を持つ者”でした。
「ただし、その方はこの件には関係ありませんが」
「知るか。持っていけ」
グイルにとっては、もう魔法界の生き物なんてどうでもいい存在なのです。
「いいですね。では、代価は…」
悪魔はグイルを覗きこみました。
「『愛』を」
「は?」
絶対に自分の魂を請求されるだろうと思っていたグイルは、ぽかんと口を開けました。
「あ…愛?」
悪魔はにこにこと頷きました。
「そうです。貴方は『愛』を俺に渡すのです。
ただし、貴方はこれから先、愛しても、それを表現することができなくなりますが」
これまた、グイルに必要ないモノでした。
「わかった。そんなのいらん」
悪魔はさも嬉しそうに笑うと、グイルにとある魔術師の魔力を注ぎました。
「ひとつの犠牲が払われました。あとは、貴方がその手で払わねばなりません」
「どうやって?」
「魔力は使いなれれば強くなります。その練習にもなるでしょう。今は想像ひとつで、実現します」
グイルは再び黒ずくめの人間たちを見据えました。
(こいつらを、悪魔に捧げる)
ふつふつと殺る気が湧いてきました。
「悪魔」
「はい?」
「名前、あるなら何ていうんだ?」
「・・・・・」
悪魔は契約者の意外な質問に首を傾げて、答えました。
「ルカ。俺はルカという悪魔です」
「ルカ」
「はい?」
「ありがとう」
時間が動き出しました。
グイルはルカに言われた通りに想像しました。
まずは、一人の身体がバラバラになるのを想像しました。
断末魔の叫びが聞こえ、そのとおりになりました。
ある者は悲鳴をあげながら、自分の身体を何度も毒の塗られたナイフで突き刺します。
ある二人は斬り合いを繰り広げ、足や腕が無くなっても戦い続け、相手をようやく殺すと、自分の心臓も刺して絶命しました。
あとは、やれ毒を飲んでのたうちまわったり、油をかぶり火に飛び込んだり、仲間にメッタ刺しにされたり、自害させられたりしました。
つまり、そこにいたルカを除く黒ずくめは全て、苦しみぬいてしにました。
全てグイルの魔力により行われたことでした。
「全ての犠牲をいただきました」
ルカは黒い霧となってきえました。
グイルは死と血のにおいの中に立っていました。
ルカがアリアと出会う前のお話でした。