姫と吸血鬼のお稽古
同時進行の方の『リュウとマナと魔法』は編集長(友達)以外も読んでくれたらしいです。
感謝です。
嬉しスギて昨日は全然眠れませんでした。
姫と悪魔と魔法、始まります。
アリアとロンドが向かい合って立ちます。
ロンドはアリアに目を閉じるように言うと、魔法で異空間を作り出しました。
「・・・・・」
何してるの? という竜王の無言の問いかけに、ロンドが「見ていればわかりますよ」と手で言って、アリアは両手を合わせて構えます。
ルカはやや心配そうに見守っていました。
お稽古が始まりました。
「まずは草の上から始めましょう」
ロンドは言って異空間に手をかざすと、一気に草原が広がりました。
風も雰囲気作りといわんばかりに吹いています。
「足元の草の存在を感じてください。できましたか?ではそのまま」
二時間経ちました。
「お疲れ様です。草は終わったので、次は水でいきましょう」
今度は辺り一面に水がはられました。
水平線が遠いです。
「ほえ?」
アリアは初めて目を開けて、ロンド作の異空間を見ました。
「あ、世界が白いのはすいません。ちょっと手を抜きました」
ロンドはすぐに手抜きをバラしました。
「そうじゃなくて、もう草原は終わり?」
きょとんと問うアリアに、おや、とロンドは笑いかけ
「どれくらいの時間が過ぎたと感じましたか?」
と聞きました。
「ん~と、20分」
アリアの答えに、ロンドは驚いたと音を出すと
「凄い集中力ですね」
とほめました。
水のお稽古も、二時間で終わりました。
「水も終わりです」
アリアはまた「あや?」と発しました。
「今度はどれくらいに感じましたか?」
「2分」
凄いどころの騒ぎじゃありませんでした。
ロンドがぽかんとしていると、なにやら「くぅ~」という音がしました。
見ると、アリアがお腹をおさえて恥ずかしそうにしています。
「休みましょうか」
ロンドは笑いながら言いました。
「お帰りなさいませ、姫様。お茶とお菓子をご用意しております」
ルカの発言に、アリアがどんだけ喜んだかはいうまでもありあません。
「焼き菓子だ焼き菓子だ」
この時代は、焼き菓子=クッキーとか焼いたお菓子の時代です。ケーキも焼き菓子に入ります。
で、甘い物大好きな甘党プリンセスは、嬉しそうに大きめの焼き菓子にかぶりつきました。
そう、まるで、普通の女の子のように。
「凄い集中力でしたよ。ですから、あまりにも力を使ったことになります。で」
ロンドの意味ありげな微笑みに、ルカはため息交じりに「分かりました」と言いました。
「特別ですよ、姫様。生クリームとイチゴジャムを追加です」
「わあ~い!ありがとうロンド先生!ルカ!」
「いえ・・・」「どういたしまして」
ルカがぽや~っと、ロンドがにこにこと答えました。
竜王が落ちてきました。
で、ロンドを捕まえると「結局何してたんだ?」と無言で聞いてきました。
「それはですね」
ロンドは気前よく教えてくれました。
「精神力と集中力の強化です」
「?」
「魔法というものは、割と複雑で、どれほど強い魔力を持っていようと使いこなせなければ意味がありません。それどころか、間違えてしまえば闇に墜ちることすらあるのです」
「ん」
「アリア姫も、生まれながらに強大な魔力を持っていましたが、最近からどんどん魔力が更に強くなっているのです。姫が王となる頃は、軽く今の審判者の力を超えていることでしょう」
魔法界用語説明:審判者
国を治める王の中で最も強大な力を持つ最高位の王。
審判者は、『審判の天秤』というこの世で最も強い魔法具を扱う権利を持つ。
審判者が審判するのは、世に在る全ての魔法・魔術・魔力。
それこそ天秤のように魔力を安静に保ち、魔力の無かった者が魔法を使いだした場合は、現地に飛んで審判をする。
ちなみに、最初の審判者は、アダムとエバの子アベルである。
よって、審判者は「我こそアベルが末裔」と名乗ることが多いらしい。
「というのは、姫の預言なんですけども。とにかく、姫が審判者になるのを阻止するには、魔力を抑えるしかないということです」
「アリア自身の魔力で、魔力を抑える?」
「そうです」
とりあえず、集中力を高めるということだったらしいので、竜王は納得してアリアの所にいきました。
「集中力が上がったら、正反対の魔法を同時に使うことができる。強くなりたい、とも、姫は言ってましたよ」
竜王に聞こえる事を知っているロンドは、小さくそう付け足してくれました。
「頼みますよロンド。夕食までに減らしてください」
「姫なら大丈夫ですよ」
久々に焼き菓子とお茶でお腹いっぱいになったアリアは、やる気充分にいどみました。
「では、夕食までに全力でカロリーを消費しましょう。本日最後のお稽古は木の上でどうです?」
「異議なし!」
沖縄県に存在するガジュマルの木を知ってるでしょうか。
知らなくても勝手に話しは進みますが、あのガジュマルのような雄大な木の上に、アリアとロンドは立っていました。
木の上のお稽古は、三時間におよびました。
「はい、終了です。どれくらいでした?」
「3分より早いと思われます」
姫はたった1日で、もの凄くレベルが上がった。
「ルカ~。ただいま~」
主の声に輝くルカが、キッチンにおりました。
「今日のごはんは?」
「シチューですよ。良い野菜とお肉が城(姫様の実家)から届いたので。ロンドもいかがですか?」
「いただきます」
普通は使用人が主君と食卓を共にすることはないのですが、ルカはアリア姫の命令の名の下、一緒に食べます。
やがて月が昇り、アリアが大好きなルカの初めてのお友達のロンドは、帰って行きました。
もう少し一緒に過ごしてみたかったです。
-ルカ談ー