死神の真意
死神さんが戦います。
「繰り返します。屍侵入、ランクは壱の上の上です。滞在中の班は局長の指示のもと、速やかに屍を排除してください」
アナウンスが止み、警報が鳴ります。
「よっしゃあああ!十二班隊、三人だけど出動ォォ!」
「「了解!」」
隊長の号令にすぐさま反応したアリアと融流は、隊長の後を追います。
頭に狐と竜を乗せて。
「で!屍って何ですか?あとランクって何ですか?」
「うむ!それは…」
隊長は途中で飛んできた破片にぶつかり、ダウンしました。
「「……」」
「?」
融流は溜め息をついて、代わりに説明してあげました。
「屍はアレだ」
開いた穴を覗き、融流は実に恐ろしいモノを指さしました。
とにかく暴れています。
「あれこそ屍。屍は死者の魂が成仏し損ねた者のなれの果てだ」
「え?アレ元生き物?」
「あの力は間違いなく怨霊だ。恨み辛み無念の姿。あれは情であって、魂は念に操られている状態にある」
「戦うの?」
「ああ。死神の刃だけが奴を斬り、強制成仏する事が出来る」
融流は銃を構えて続けます。
「死神の刃は一度使いこなそうものなら後戻りできない。だから、危なくなった時以外は動くな」
そして融流は飛び出して行きました。
ずぱぱぱぱぱぱぱぱぱ どごしゃ ずぱん
音が沢山聞こえます。
「ほえ~凄いな。融流くん」
「凄い」
竜王もアリアに同意します。
「凄いな。しかも融流くん、優しいんな」
「優しい?」
「優しいよ。あと綺麗」
「?」
「融流」
「あ?」
ロイに呼ばれて融流は返事をします。
それでも手は止まりません。
全力で撃ちまくります。
屍は痛そうにギャーギャー言いますが、硬質な体を持つらしく、見た目よりダメージは少ないようです。
「なんか融流、いつもより凄いね」
「当り前だ。アリアを仲間にはしないためだ。絶対に認めん」
融流の言葉にロイはあららとなります。
「何?あの子は嫌いなタイプ?」
「違う」
「お?」
不思議な返事でした。
「だったら何で認めない?」
融流は死神の刃を火炎放射器の形状にして、屍に炎を浴びせました。
「アリアは死神じゃない」
「だからか?」
ロイはちょっと呆れた声を出します。
「屍の救済ならともかく、死者と強く触れ合うのは死神だけでいいだろ」
「「死神だけで充分だ」」
「私に同じ悲しみを与えたくないと思っているんだよ。融流くんは」
「悲しみ。死を運ぶ死神が持つ、特別な感情の一つ。奴は特に、その情が強い」
「あの姫はもう“死”を知った。これ以上は知らせたくない」
融流はもう一つ銃を造り、両手でばんばん撃ちました。
攻撃力は二倍。
「“死”を運ぶ悲しみを知らせたくないんだよ」
『だから、この世界に来てはいけない』
「悪いですね。融流くん」
アリアは貰いたての死神の刃を握りしめて言いました。
「自分より、救うべき屍を優先させます」
融流は危うく屍の爪にヤられるところでした。
何かが屍の手に刺さり、軌道が反れたのです。
「ヤメロと言うに」
融流は舌打ち付きで言いました。
「父に約束したのですよ。救えるものは救うと」
アリアはキラキラと言いました。
「…分かってるのか。お前はもう、後戻りがきかないぞ」
アリアは融流が悔しいと思っていることが良く分かりました。
「悪いな。放っておいて」
「いやいや。むしろ有り難いよ」
どこか悲しそうな、それでいて安心したような融流。
かれから先の悲しみに怯える、それでも目の前の屍を救えることを喜ぶアリア。
そんな2人が並んで、瓦礫の上に立ちました。
「危なくなったら、俺の後ろに来いよ」
「なんで?いいの?」
「ああ」
「仲間だからな」
融流くんって実は、十二班隊の中で一番優しいんですよ。
あと、好き嫌いが激しい。
今回書いてて思ったんですけど、融流くん…君……ツンデレだね?
次回、あれやそれ。お楽しみに。