39話
「災難だったねセリアちゃん。」
髪から滴る水滴を布で拭きながらジルクが言う。
俺も雨で濡れて体毛がぐっしょりだ。
「そうですね…この頃に雨なんて珍しいですね。」
ギルドの窓から外を見てもまだザーザーと降っている。
「そうだ、これ依頼の報酬ね。受け取っといたから」
そう言ってセリアに報酬を手渡す。
「あ、ありがとうございます!」
その報酬は腰にある袋に入れておく。
「それで…問題はこれだよ。」
ジルクはマジックポーチから経験値ポーションを取り出す。
「え?普通にギルドで売れないんですか?」
ごもっともな質問をセリアはする。
俺もギルドで売っていいんじゃないかと思ったんだが…ジルクは違うのか?
「売れるには売れるけど…やっぱり売るなら高い方が良いよね?」
ジルクはコソコソ話でそう言う。
まぁそりゃそうだな。誰でも高く売れるなら高い方が良い。
「そこでだ。セリアちゃんはオークションって知っているかい?」
「オークション?言葉の意味は理解していますが…実際にオークションに行ったことはないです。」
セリアはその問いかけに対して否と答える。
オークションか…俺もやった事ない…
ネットオークションならぬ物は見たことがあるが…
「それなら早いね。実は5日後にバリム商会主催のオークションをやるらしいんだ。そこに出品してみないかい?」
ジルクは1つオークションの提案をしてくる。
…なんか大丈夫かなぁ。異世界あるあるにオークションで奴隷とか異世界の闇を見ることが多いが…
『奴隷いる?』
ちょっと変な問い掛けになってしまったが仕方ない。5文字って結構ムズいんだ…
「奴隷か…居るにはいるかもしれないけど…貴族用のオークションになるから僕らには手が届かない様な値段で売られる事が多いよ。」
ジルクは俺が奴隷を欲していると勘違いしたのか値段を答えてくれる。
うわぁ…奴隷居るのか。平和を謳歌している日本では無縁の言葉なので少し緊張する。
「で、どうする?セリアちゃん。」
再びセリアにオークションに行くかを聞いてくる。
「うーん…私は普通にギルドで売っていいと思いますけど…」
「えー…オークションってなんかワクワクしないかい?1回だけでも行ってみようよ〜」
セリアがギルドで売ると言うと駄々をこねる子供みたいに説得しようとする。
ジルクの気持ちも分からんでもないが…大人の尊厳ってものが存在しないのか?
「…はぁ。仕方ないですね。1回だけなら行ってみても良いです。」
その駄々に折れたのかため息をつきながらも了承してくれる。
「ほんとに!?やったぁ。実は前にも行こうとしたんだけど警備の人に止められてさぁ…子供だから無理って僕は小人族だって言うのにさ…」
喜んだジルクは悲しい過去を披露してくる。
なるほどねぇ…付き添いの人が欲しかった訳か。
「じゃあそういう事だから。明日、経験値ポーション出品しに行こか。期限は明日迄だからね。」
ジルクはそう言うと手に持っている経験値ポーションをマジックポーチに仕舞う。
「分かりました…」
「おい、お前ら。」
急に後ろから声が聞こえてきた。
振り返ってみると粗暴な容貌のカマセルがそこには居た。
「な、なんですか?」
1歩俺の前に出て戸惑いながらも声をだす。
「…余り公衆の面前で高価なアイテムを見せびらかすな。余計なトラブルが起こる。迷惑かけるならギルド出ろ。」
そう吐き捨てるように言うと、いつも通りギルドに併設してある酒場の席につき、酒を飲み始めた。
…めっちゃ良い奴やん。なんで最初セリアに絡んでたんだ?まぁいいか。
ジルクとセリアは正論を叩きつけられたのでコソコソとギルドから出た。




