34話
「いやぁ…まさかルイくんが喋れるとは…いつも僕を驚かしてくれるね…」
手で口を拭いながらそう語るジルク。
今俺達は酒場の裏で休憩している。
何となく察した方もいるかもしれないが、こいつ吐きやがった。
まだ店の中で吐くよりはマシだが…
ってか俺を介抱役として呼ぶなよ、犬だぞ。
一応効くかはわからないがヒールをジルクにかける。
「あれ?気持ち悪さが無くなった…まさかルイくんが何かしてくれたのかい?」
『そうだよ。』
早速、ジルクからの問いをつい先程獲得した念話のスキルを使って返答する。
「おぉ…何か不思議な感覚だなぁ。そうだ!1つ聞いてもいいかい?」
ジルクは何かを思いついたかのように俺に問いを投げかける。
まぁ…『いいけど…』
「君は…転生者、かい?」
………へ?
あまりにも唐突で的確な問いに俺の思考は一瞬にして凍りついてしまう。
俺の動きがまるで氷の氷像になってしまかの様に硬直しているのを見てジルクは少し肩を揺らして笑う。
「アハハ、そんな転生者だからって取って喰ったり、あちらこちらに吹聴したりはしないよ。ただ僕の愚直な疑問に答えて欲しいだけだよ。」
子供じみた笑いをしながらジルクは俺に顔を近づける。
『……そうだ』
少し答えるのを躊躇したが、ここで嘘をついても無駄な気がして正直に答えた。
「やっぱりか…旧友を思い出すなぁ。」
何か懐かしむ様に呟く。
「ルイくんはこの事セリアちゃんには言うつもりないの?」
…どうしようか。ここでバレたら俺はセリアに気持ち悪がられるかもしれない…それは嫌だ。
『…ない。』
俺がそう答えると口を三日月の様に歪ませる。
「そうか…なら、僕は期せずしてルイくんの隠し事を暴いてしまった訳か…なら僕からも1つ隠し事を暴露しようかな。」
隠し事?…なんだ?何だか俺の背筋が薄ら寒い。
「僕の目的はね…終点に行き着く事、かな。…すまないがこれ以上はまだ教えられないかな。」
そう告げるジルクの眼は月明かりに照らされ妖しく輝いていた。
…終点に行き着く事?なんだそれ。あまりジルクの言ったことを理解出来ない。
「さて、僕とルイくんは秘密を1つずつ共有した事になる。これで少しは僕が吹聴しないって信じてくれたかい?」
…あまりに信用に足る情報とはおもえないけど…これまでの飯を奢ってくれたという恩もあるしな。
『…少しは』
「よし!じゃあまた飲みに行こうか!まだまだ飲み足りたいからね!」
俺の答えを聞いたジルクはいつもの何処か抜けた様な調子に戻る。
またって…さっきそこで胃の中の物をぶちまけたばかりじゃねぇか。
「ルイくんも、もし僕がまた吐きかけたら魔法を使って助けてくれたまえよ!」
ジルクは調子よく俺にヒールの魔法をかける事を頼む。
はぁ…しょうがないなぁ…秘密を握られちまってるしなぁ。
『はいはい。』
俺が面倒くさそうだが了承した事を聞くとそのまま酒場の方に足を向かわせた。
その歩みに俺も続いて行き、セリア達が待っている席まで戻った。




