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ハレナ視点

私の名前はハレナ・カミュ・フロース。伯爵家の令嬢にして偉大なる大魔法使い。

そんな才能にも家柄にも優れる私には今、欲しいものがある。


それは犬である。ただの犬ではない、白い毛並みに聡明で、こちらの言語を完璧に理解している犬である。


これだけでも十分すぎるほどに凄いが、それに加えて魔法すらも使える。その魔法も治癒魔法という極めて稀な物だ。


その犬を見たのは大規模討伐の時だった。

戦闘が終わった後、その場には重篤な怪我をしている者が少数存在していた。


…あの傷じゃあ街まではもたないわね。


正直こんな事は冒険者をしていれば誰でも経験すると思う。

ただその時は違った。

突然、腹に風穴を開けていた傷がまるで時計の針を巻き戻すかのように元通りになったのだ。


他の怪我人もそうだ。慌てて術者をこの眼で探すと1匹の犬が該当した。


だが驚くべきはそこでない、犬が使っていたのはハイ・ヒールでもなく、部位欠損を回復させる慈愛の息吹でもなく、ただのヒールだった。


そのヒールを化け物みたいな魔力で高位の魔法へと昇華させていたのだ。


正直、この場にいる者の中でその犬が1番末恐ろしかった。

もし、攻撃魔法をつかえたら?もし、何か問題が発生してこの場で人間にその牙を向けたら?


その時は私達は為す術もなく、消え失せるだけだろう。

そんな身の毛もよだつ程の恐怖が私を襲った。


幸いその犬はある少女に使役されているみたいであった。

少女は犬の異常性には気付いていなようだったが。


この少女に使役される位なら私が使役したい

そんな欲望が私の中を満たした。


私は金級冒険者としての権力を使って同じ馬車に乗り、強引に交渉を仕掛けた。


結局、お金での交渉は決裂してしまったが…


だけど私は諦めない。絶対にあの犬を私のモノにする。


「あれ?ハレナちゃん達だ。4日振り!」

ギルドに入る直前、手に酒瓶を持っている少年に絡まれる。


この少年は確か…

「あんたは確か…イウスだったかしら?」


「全然違うよ!1文字も合ってないよ!」

少年は声を荒らげて抗議する。


「こら、この人はジルクくんでしょ。」

横を歩いていたオルガが訂正をしてくる。


「…それでジルクくんは何をしてるんだ?セリアちゃん達は一緒じゃないの?」

!そうかあの犬と一緒の馬車にいた馴れ馴れしい奴か。


「いやぁ…セリアちゃんが銅級への昇格試験の最中でね、手持ち無沙汰だからその辺をぶらぶらしていたんだ。」


「…つまり、昼間から仕事もせずに酒を飲んでいる、のんだくれってことね。」


「…否定はできないね…」

私の鋭い言葉が刺さったのか反論もしてこない。


そんな他愛もない会話をしているとギルドに向かって走ってくる人影を見つける。


「ハァハァ誰か!助けてください…」

荒い息遣いをしながらビキニアーマーの女が

切実に声を叫ぶ。


「ど、どうしたんだ?それにこの人は受付嬢のジアンナさん?」

オルガ少し慌てた様子で状況を確認するために女性に問い合わせる。


「森に、森にゴブリンジェネラルが出てきて、まだセリアとわんころが!」

荒い息を息付く間もなく状況を素早く伝える女性。

犬?セリア?


「私が行く、早く案内して。」

一瞬で反射する様に口から言葉が出る。


「え?ちょっハレナ急すぎないか?まぁ俺も行くけど…」


「私…案内する。サバナ、休んで…」

ビキニアーマーの女性の後ろに隠れるようにいたフード付きの外套を纏った人が案内役をかってでる。


「で、でも私も。」

サバナは口篭るように戸惑いを言葉にする。


「君はジアンナさんを休ませる事が急務なんじゃないのか?」

オルガはサバナが背負っているジアンナを見ながら言う。


「ッ!そう、ですね…キクちゃんあとは頼んだよ!」

先輩の忠告を受けて納得したのかもう1人の仲間に頼む。


「…任せて、じゃあ全速で行く。」

そのまま脇目を振らずに全速力で街の正門まで走っていく。

私達もその後に続いて走る。




「ハァッ…着いた。」

息も絶え絶えにそう告げる菊。

そこには木々がなぎ倒され、地面が針状に隆起し、赤黒い血が地面に染み付いていた。


「これは…」

この異様な戦いの跡を見て、少し絶句をしているオルガ。

私も辺りを見渡すと、暗緑色の液体とゴブリンジェネラルと思わしき首が転がっているのが見えた。

急いでそちらに向かうと、そこにはボロ雑巾のようになったルイと白い顔で倒れふしているセリアの姿があった。



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