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28話

結局の所俺の変速は相手が見えないと話にならない。

多分この戦いはこの魔法が扱えるか扱えないかですべてが変わる。


…やるしかないか。正直成功するかも失敗するかも分からないし、失敗した時の反動も計り知れない。

…それでもやらなきゃ俺とセリアは死ぬ。


俺は意識を集中させ、身体強化魔法を再び起動させる。

こっからが本番だ。身体強化魔法で纏った魔力を目に集中させる。


その刹那、周囲の解像度が何倍にも上がったかのように明瞭に、鮮明に写る。

そして同時に、こちらに青筋を立てて怒り狂ったゴブリンジェネラルが俺に向かってくるのも分かる。


一応ゴブリンジェネラルの加速は辛うじて見えるようになったものの、身体がついて行かない。


…なら!動きの予兆をこの強化した目で読み取るしかない。


向かってきたゴブリンジェネラルは剣を持った手の筋肉を隆起させ、剣の方向を平行へと変える。


これは…右からの薙ぎ払い!


そう判断した俺は薙ぎ払いを避けるために身体を低くする。

俺の飲み通りゴブリンジェネラルの薙ぎ払いが俺の頭上を豪風と共に過ぎ去っていく。


避けた次の瞬間、剣の剣身を平行から垂直へと手首で握り変える。


これも!薙ぎ払いから切り返しの振り下ろし!

その思考からほぼノータイムで横に飛び退く。


ゴブリンジェネラルの凶器は俺の居たところの空気を切り裂きながら振り下ろし、地面をぱっかりと真っ二つに両断する。その代わり剣が地面に深く刺さっている。簡単にはぬけないだろう。


ハァハァやばい。これまじで疲れる。身体的疲労もあるが、精神的疲労の方が凄まじい。

なにせ、死ぬか生きるかの瀬戸際を反復横跳びしてる様なもんだからな。


この時、俺の意識は疲労によって集中力が途切れ、一瞬だけゴブリンジェネラルから意識を外していた。


突如として剣を抜く素振りをやめたゴブリンジェネラルは剣を支点として回し蹴りを仕掛けてくる。

一瞬にして眼前にゴブリンジェネラルの丸太のような足が豪風を伴いながら、俺に迫ってくる。


あ…

世界がスローモーションとなって俺の死を克明に描く。

どうやったって避けられない…


諦めかけたその時身体に暖かな風が俺を包み身体を押し上げる。

その風によって押し上げられた俺の眼下をゴブリンジェネラルの足が通り去っていく。


「私だってただルイの足を引っ張るために戻ってきた訳じゃない!」


今のはセリアの魔法か!まさに九死に一生だった。


もう油断なんてしない!疲れなんか知ったことか!今目の前にある死線をくぐり抜けることだけを考えろ!


「グラァァァ!!」

避けられたことがよほどゴブリンジェネラルの琴線に触れたのか怒りの咆哮をあげる。

辺り一帯の空気がビリビリと震える。

だけど…前聞いたコボルトキング程ではない


そしてゴブリンジェネラルは再び魔法を使うために手を地につける。


もうそのモーションは魔法ってことは分かってる!……待て、お前どこを向いて…そっちは!


「ガウっ!ガウッ!!」

急いでセリアの方に向かって吠える。

頼む!どうか伝わってくれ!


「えっ?」

急にセリアの方を向いて地に手をつけるゴブリンジェネラルに呆気をとられていたのか、俺の叫ぶ鳴き声に気づかない。


地面がぐにゃりと変形し巨大な針へと変貌を遂げ、セリアの腹に大きな穴を開けた。


血が吹き出す音と首に提げていたペンダントがパリンと砕ける音が耳朶を打った。


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