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26話

投げ飛ばされた血塗れのジアンナを慌ててサバナが受け取る。

「ちょっ!?ジアンナさん!!大丈夫ですか!?」

サバナは今まで1番の動揺を見せてジアンナの安否を確認する。


俺も慌てて<ヒール>を唱える。一応傷は治ったが…血は元に戻らない。このままだとまずいかもしれない。ジアンナは意識を失ったままで瞳を閉じている。多分しばらくは戻らないだろう…


「なッ!今のは!?」


「今のはルイの治癒魔法です…それよりサバナさん達は逃げてください。私達じゃ…勝てない。」

セリアは恐怖を噛み殺した顔でそう告げる。


俺達が会話している間、ゴブリンジェネラルこちらを嗤いながら剣を空に振るっていた。まるで獲物の品定めをしているみたいだ。


「何言ってんの!?全員で逃げようよ!」

サバナは狼狽えた様子で訴えかける。


「…無理、1人は囮…必要…って来る!」


そしてゴブリンジェネラルは動き出す。圧倒的なステータスからくる加速は俺達の目の前にまでほぼ一瞬で到達する。


やっべぇ!!

慌てて後ろに飛び退くが剣先が俺の身体を切り裂き、腹のあたりの毛が血に滲む。


そのまま俺の方をみてニヤついた顔をする。


コイツっ!俺の事を狙ってやがるな!

…だったらせめて一矢報いてやるよ。

俺が失敗から編み出した新技をぶっつけ本番だがゴブリンジェネラルにぶつける。


俺に向かってゴブリンジェネラルが足で地を蹴る。その瞬間ある魔法を唱える。


変速

急激に加速したゴブリンジェネラルは標的である俺を越してその奥の木にぶつかる。


成功した…正直失敗するかと思ったが…これなら!セリア達と協力すればいけるかもしれない!!


そう思い、セリア達が居た方を見ると、人影はなくただ、ジアンナが流した血痕が地に赤黒く染み込んでいるだけだった。


………え?


俺が硬直している間にゴブリンジェネラルは態勢を整え、鬼のような憤怒の形相をこちらに向けていた。


※※※※※※※※※※※※※※※※


「ちょ、ちょっとサバナさん!?いきなりどうしたんですか!?」

ジアンナを背負いながら、私の手を掴み必死の形相で森を駆け抜ける。


「何って!アイツから逃げてるんでしょ!?」

サバナは荒い息遣いの間からセリアの問に答える。


「で、でもまだルイが!!」


「…1人は…囮…」

菊はフードを深く被っていたがその時の表情は見なくても手に取るように分かった。


「…私達に出来ることは可能な限り速く街に着いて救援を呼ぶこと…」

サバナも歯を食いしばりながらジアンナを背負い走る。


「…だったら行っててください。救援を呼ぶなら2人でも足りるはずです。私はルイを助けに」


「ダメっ!!」

足を止めたセリアの言葉を遮る。


「…サバナさん?」


「セリアちゃんにとってルイちゃんが大切なのは痛い程分かるよ…だけどね…優先されるのは犬の命より人命でしょ?」

その言葉はストンとセリアの胸に落ちてきた。少しだけ納得してしまった自分が居た。


―本当にそれでいいの?

何処からか声が頭の中に響く。


―せっかく力をつけたのに君は嘆くだけでまた逃げるの?


そうだ。私は…もう逃げないようにこの2ヶ月間必死に努力したんだ。


―なら今すべき事は?


「…ごめんなさいサバナさん。私…行きます。後悔しない為にも恩人の為にも。」

そう告げるセリアは覚悟を決めた人の姿をサバナの瞳に写していた。


「ッ……これ持っていきな。」

そう言って首に提げていたペンダントの紐を引きちぎってセリアに渡す。


「…これは?」


「1度だけ…即死の攻撃を肩代わりしてくれる…高かったんだからね!絶対に返してよ!」


「あ、ありがとうございます!!」

まさか餞別の品をくれると思っていなかったのか動揺した様子でペンダントを貰う。


「…早くいく、…恩人…助けるんでしょ?」


「…行ってきます!」

そのまま元来た道を駆けていった。後ろも振り返らずに。



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