19話
ガタゴトと馬車の音が鼓膜を揺らす。
「いやぁまさかルイくんが治癒魔法もつかえたなんてねぇ。」
俺の頭をポンポンと撫でながら言う。
「…すいません黙っていて。」
セリアはバツの悪そうな顔でジルクに謝罪をする。
「いやいや、冒険者たる物手の内の一つや二つ隠しておくことは珍しい事じゃないよ。むしろあの場で使ってくれたのは本当に助かったよ。」
ゴブリンとコボルトの集落を殲滅した後、戦ったもの達には、重篤な怪我を負っている者がいた。
その怪我を俺の治癒魔法を使って治してあげたのだ。俺が使ったって言わなければバレないと思っていたが普通にバレた。
…正直、善行ポイント荒稼ぎ出来んじゃね?っていう浅い考えでやってしまった。反省だ
「ねぇ、この犬私に頂戴よ。」
「ダメだってハレナ、この子はセリアさんと従魔契約をしているんだから。」
そう、この馬車には今ハレナとオルガ達が乗っているのだ。カマセル達は他の馬車に乗り込んだらしい。
ちなみに俺が治癒魔法を使っていると見抜いたのはハレナだ。そのせいで俺に興味を持ったらしく、馬車に乗り込んできたのだ。
「は、はは…」
セリアは金級冒険者である2人を前に萎縮しきっている。
「それにしても、オルガくんもハレナちゃんもコボルトキングの戦いすごかったですねぇ。僕興奮しちゃいましたよ。」
ジルクはセリアが萎縮しているのを見てか話を逸らそうとする。
「…あんた誰だっけ?それに子供?」
ハレナは無慈悲にジルクの地雷を踏み抜く。
「ぼ、僕は子供じゃない!それに、ジルクっていう立派な名前もあるんだぞ!」
「そう…。ねぇセリア白金貨10枚でどうかしら?」
ハレナは興味がない事にはとことん無関心な性格なのかジルクの激昴をスルーしてセリアに交渉を持ちかける。
白金貨って!セリアが興奮していた銀貨の100倍の値じゃなかったっけか?
「あの!…あまりルイをもの扱いしないでください。」
「!へぇ… イテッ」
ハレナは抗弁してきたセリアに品定めをするような目線を向ける。
その瞬間後ろからはオルガに頭をチョップされ堪らず痛みの声をあげ頭を抱える。
「ほんとにごめんね。ハレナはいつも興味があることになると、一直線になってしまうんだ…」
オルガは申し訳なさそうに謝罪をしてくる。その姿には金級冒険者である事を忘れてしまうほどに自然であった。
「…まぁ許してやるよ。僕は心が広いからね!」
何となく既視感を感じるな…
「そういえばジルクくん達っていつからパーティ組んでいるんだ?」
「あ、そういえばまだ正式には組んでいないんだった。」
ジルクはまだお試しだ、ということを忘れていたみたいであった。
「え?あんた達戦闘中息ピッタリだったじゃない。まだパーティも組んでなかったの?」
チョップされた痛みから復活したハレナは信じられない、という顔をしている。
「じゃあ…改めてセリアちゃん。僕とパーティを組んでくれないかい?」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
セリアはジルクからの申し出を受け、晴れて正式なパーティとなった。




