14話
陽は落ち、辺りはすっかり闇に染まる。
「今日はここで野営をする!各自、警戒を怠らないように!」
パチパチと焚き火が鳴る音と、少し遠くから聞こえる川のせせらぎが心地よい。
少し微睡みを楽しでいる時、セリアは焚き火の近くで火の番をしていた。
俺達はまだ鉄級冒険者だから1番楽な最初に
夜番をすることになったのだ。
「ふわぁ~眠いなぁ。いつもだったらもう寝てるのに。」
そう言ってあくびをしながら愚痴っているのはジルクだ。
まだ夜の始まりだぞ…時間にして大体22時ぐらいか、本当に子供みたいな生活リズムだなおい。
「ジルク先輩、これで目を覚ましてください。」
そう言ってジルクに沸かしたばかりの熱湯を入れた簡易的なお茶を手渡す。
「あぁ、ありがとうセリアちゃん。気が利くね。」
セリアからお茶を貰うとふーふーと息を吹きかけてからゆっくりと口に含む。
ちなみにカマセルは今までの1回も絡んでこなかった。少し警戒していたのだが…杞憂かな?
「ッツ!」
突然セリアは立ち上がり長い耳をピクピクと震わせる。
「どうしたの?って敵襲か。」
どうやらしジルクも少し遅れて敵襲に気付いたみたいだ。
俺気づいてないんだけど…
木々の間から姿を現したのは比較的大柄な四足獣の猪だった。
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名前:
種族:ファングボア
レベル:7
HP:15/19
MP:6/7
筋力:13
俊敏:11
耐久:14
器用:8
魔力:5
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ファングボアか…これまたファンタジーど定番の魔物が出てきたな。
「あの、人呼んできた方がいいですか?」
ファングボアから目を逸らさずに先輩であるジルクに聞く。
「いんや。こういう小物ぐらいだったら各自排除するだけだよ。一々起こしていたらキリがないからね。」
「了解です。私は魔法で援護しますので前衛はルイとジルク先輩でお願いします!」
了解! 俺が前に出ようとするとジルクが手を出して動きを制する。
「ここは僕に任せてよ。大方このファングボアは空腹で我を忘れて1匹で突っ込んできた魔獣だろう。僕の実力を示すには十分だ。」
そう言ってマジックポーチから真紅の名槍を取り出し、クルクルと回す。
その動作には一種の演武のような華麗さが含まれていた。
「分かりました…危なくなったら言ってくださいね。」
一抹の不安を噛み殺した様な声で送り出すセリア。
まだ、子供みたいな容姿のジルクを信じきれてはいないみたいだ。
槍を構えてファングボアを正眼に捉える。
ファングボアはヨダレを垂らしながら血走った目で相手目掛けて猛進する。
その突進は猪の名に恥じない猪突猛進であった。
ただ、それをまともに受けるほどジルクは弱くない。
槍を地にたて、まるで軽業師のようにひょいっと宙に飛び、突進を避ける。
ファングボアがちょうど真下に位置した時ジルクの体は重力に従い落ちる。
だが、その重力を味方につけ槍をファングボアの脳天目掛けて突き刺す。
真紅の名槍はファングボアの強固な頭蓋骨をもろともせずにあっさりとかち割り、その戦いの幕を閉じた。
「ふぅ。どうだった?」
戦いが終わり息をつくとセリアに感想を求めてくる。
「す…凄い、です。」
興奮した様子で感想を漏らす。
「はは、これで僕は本当に銅級ってことが信じれたかい?」
どうやらセリアの心の内はジルクに見透かされていたようだ。
「すいません…少し疑ってました。」
正直に心の内に思っていた本音を暴露する。
…そうだよな。俺だって鑑定がなかったら心の底まではジルクの強さを信じれていなかったと思う。
「まぁ仕方ないよ。こんななりだしね。じゃあそろそろ交代かな?」
そう言うと馬車の中から次の夜番が出てくる。次の人は同じ馬車に乗っていたフードを深く被った男性かも女性かも分からない人物だった。
「…交代。」
そう一言だけ呟くと焚き火の傍に腰を降ろす。
「…そろそろ僕らも寝ようか、明日が本番だからね。」
「…そうですね。」
馬車の中に入り床に置いてあった毛布にくるまり眠る。
途中ジルクが俺の事を枕にしてきやがった、こいつ寝相悪!




