9話
どうやらエルフの伝承では、大昔に治癒魔法を使って、里を災害から守ったとされているらしい。それ以来。治癒魔法を使える獣は聖獣として崇め立てる慣習があるらしい。
治癒魔法を使える時点で俺に当てはまるが、聖獣様!なんて言われるのは勘弁なので
秘技、露骨に嫌な顔をすることによって元のルイの呼び名に戻った。
「薬草の報酬とホーンラビットの角、ゴブリンとコボルトの魔石を合わせて銀貨4枚と銅貨2枚です。」
今はギルトの換金所で今日の戦利品をお金に変えているところだ。
「ありがとうございます!」
お金が入った布袋を受け取ったセリアの顔には笑みが浮かんでいた。
「セリアちゃん。今日どうしたの?いつも薬草しか取ってこなかったのに…大丈夫?無理してない?」
「大丈夫ですよ!ジアンナさん。私には聖…ルイがいるので!」
今、一瞬聖獣様って言おうとした?
「へぇ~ほんとにその犬が?」
またジアンナが訝しむような目線を俺に向ける。
「失礼ですよ?今日だって、コボルトを1人で倒した後に私の相手のゴブリンにも助太刀してくれたんですよ!」
「おいおい!セリアちゃ~ん冗談を言ってジアンナちゃんを困らせちゃいけないよぉ。」
急に話に割り込んできたスキンヘッドの粗悪な相貌の男がセリアの肩に手を回す。
なんだコイツ…セリアの友人か?
「か、カマセルさん…」
そう言うセリアの顔は萎縮するような顔をしていた。
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名前:カマセル
種族:ヒト
レベル:14
HP:38/38
MP:19/19
筋力:23
俊敏:18
耐久:19
器用:19
魔力:15
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ほう…強いな…てか思ったんだがレベルの割にステータス低くないか?個人差があるのだろうか?
「ちょっと!カマセルさん。ギルド内の諍いはご法度ですよ!」
それを聞いたカマセルはすっとぼけるような顔をする。
「諍い?俺はただセリアちゃんと楽しく話したいだけなんだけどなぁ…なぁ?セリアちゃん。」
「は、はは…」
静まりかえったギルドの中にセリアの乾いた笑いが響く。
「それに、さっき盗み聞きしてたんだけどこのひ弱そうなボロ犬がコボルトを倒しただってぇ?冗談も程々にしろよ。」
「撤回してください。」
セリアは萎縮するような態度から一転、毅然とした態度でカマセルに物申す。
「あ?」
「撤回してくださいと言ったんです。この子はボロ犬ではなく、ルイと言う名前を持っています。それに、冗談でもなんでもなくただ真実を述べてるだけです。」
「ちょ、ちょっと?セリアちゃん?」
ジアンナさんは豹変したセリアに驚いているのか、受付の中で右往左往している。
「大人しく聞いてれば、好き勝手いいやがって!」
額な青筋を立てたカマセルはセリアの胸ぐらを掴もうと手を出す。
それは駄目だな。
セリアに向かっているカマセルの手を俺の足で押さえ付ける。
何となく不穏な空気を感じとっていた俺は、身体強化魔法を事前に発動していたのだ。
「なッ!」
カマセルは俺の足を振り払おうと力を込めるが俺の足は動かない。
ふっふっふ実は、朝コボルトとゴブリンと戦った時にレベルアップしていたのだ。
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名前:ルイ
種族:イッヌ
レベル:7
HP:22/22
MP:18/23
筋力:22
俊敏:20
耐久:15
器用:15
魔力:160
<スキル>
鑑定:2 魔力操作:2 身体強化魔法:2
治癒魔法:1
善行ポイント85
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そう、ただのレベルアップだけではなく身体強化魔法もレベルアップしていたのだ。これによって強化の度合が上がり、カマセルの腕を押さえ付ける程の膂力を手にしたのだ。
もう一段階押さえ付ける力を強くする。
「イッイテテ!」
痛みに耐えきれなかったのか思わず声が出てしまっている。
そろそろ許してやるか。
そう思い、押さえ付ける力を緩める。
「クックソがっ!覚えとけっ!」
まるで噛ませ犬みたいな捨て台詞を吐き捨てギルドから走り去る。
ふぅ…少し緊張した…
「ほんとに強かったんだ…その子…」
ジアンナは驚きを隠せない顔で言う。
「ふふっでしょ?」
そう言って笑うセリアは自慢気な笑みを浮かべていた。




