メソポタミア神話詩『ギルガメシュ讃歌』
古代メソポタミアの神話の一つ『ギルガメシュ叙事詩』を題材に、つくりました。
本家『ギルガメシュ叙事詩』には到底及ばないと思いますが、神話っぽい雰囲気や詩のようなリズムが感じられる作品を目指してつくりました。
この詩を『ギルガメシュ叙事詩』の邦訳を手がけられた矢島文夫先生や月本昭男先生、戯曲『ギルガメシュ』の著者で哲学者の故・梅原猛先生、『詩人の冒険・音韻訳ギルガメシュ』の著者である川崎隆司先生、古代メソポタミア料理の研究・再現を行っておられる「音食紀行」の遠藤雅司先生をはじめ、古代メソポタミアを愛するすべての方々に捧げます。
二つの大河に挟まれし、肥沃な大地メソポタミア。
かつて、この地に興りしウルクの町を、治めし一人の王者あり。
その王者こそギルガメシュ。日干し煉瓦を積み上げて、麦の穂波打つウルクを囲む 高き城壁築きし御方。
雄牛のごとく逞しく、力漲るその肉体、三分の二は神にして、三分の一は人間なり。
神の血を引くギルガメシュ、力は強く 賢明なれども傍若無人、荒々しく無慈悲なり。
愛を知らず友もなく、昼夜町をのし歩き、
男を殴り、女を泣かせ、勝手気ままに暴れたり。
見かねたアヌとエンリル、エア、シャマシュ——偉大な天の神々は、
工匠の女神アルルに命じ、
半ばは人間、半ばは獣の男エンキドゥ、粘土をこねてつくらしめ、
ウルクの暴君打ち負かし、王の心を矯めんとて、天より地上へ遣わしたり。
かくてこの世に生まれしエンキドゥ、獣と共に野を駆け回り、力強く育ちたり。
野育ちの男エンキドゥ、ある日水場へ来たりし折、
美しき女シャムハトと 出会いて一夜睦み合い、
太陽神の光差し染める 明け方、二人で森を去る――互いに手を取り、指絡ませて。
エンキドゥ、シャムハトに、衣まといて肉体を隠し、
麺麭を食し麦酒を飲むこと教えられ、
人間の習わし身につけたり。
エンキドゥ、シャムハトに連れられて、ウルクを訪れ、町の王と出会いたり。
ギルガメシュとエンキドゥ、双方ひたと相手を見すえ、共に闘志を炎と燃やす。
たちまち始まる取っ組み合い、一対一の真っ向勝負。
足を踏ん張り、腕の筋肉盛り上がらせて、共に一歩も譲らざる。
やがて両者は疲れ果て、互いに力を認め合う。
二人の間に友情芽生え、手を打ち合わせ抱き合いたり。
かくて二人は意気投合。以後数々の冒険を、力合わせて繰り広げたり。
香り高き杉の森 守る怪物フンババ倒し、
イシュタル女神が差し向けし 天牛見事討ち果たしたり。
されど神をも恐れぬ振る舞いに、偉大な天の神々怒り、
エンキドゥ臥したり、死の床に。
友を看取りしギルガメシュ、愛する友の死を悼み、長らく涙に暮れた後、
いずれは自分も死ぬのかと 恐怖に駆られ、旅に出る。
永遠の命を得んとして、荒野をさまようギルガメシュ。
長く険しき旅路の果てに、たどり着きたる大河のほとり、
かの地に住まう伝説の 方舟つくりしウトナピシュティム。
かつて神々引き起こしたる大洪水、そを生き延びし不死なる賢者。
命の秘密知る彼は、ウルクの王に教えを請われ、
長き白ひげ扱きつつ、ため息まじりにかく語りき。
人間皆いずれは死すべきものぞ、死を逃れるすべはなし。
それでも不死を求めるならば、七日と七晩眠らずに、過ごしてみせよギルガメシュ。
さすれば汝は神々と 同じく不死の身とならん。
王は試練に挑めども、たちまち睡魔に襲われて、眠り続けた七日と七夜。
かくて永遠の命を得ること叶わずに、落胆したるウルクの王を
不死なる賢者は憐れみて、ギルガメシュに教えたり。
食めばたちまち若返る 薬草生えたるは何処かを。
ウルクの王は深淵に 一人飛び込み、潜りに潜り、
たどり着いた水底で、仄かに光る草見つけたり。
これぞ若返りの草なりと、大いに喜び、摘み取りぬ。
されどウルクへ帰る道すがら、泉で水を浴びたるうちに、
邪なる蛇 忍び寄り、まんまと薬草持ち去りぬ。
後追う王を嘲笑う かのごとく皮脱ぎ捨てて。
かくて長旅の苦労は水の泡、悲嘆に暮れにしギルガメシュ。
されど、かくなるうえはウルクへ帰り、
限りある命尽きるまで、王の務めを果たさんと、
面を上げて胸を張り、一歩一歩、また一歩、強く歩んで帰りたり。
威風堂々、ウルクの町へ。
高き城壁囲む町、麦の穂波打つウルクの町へ。