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200x年 春
園児たちの無邪気な声と余所行きの大人たちの声に紛れて泣き声が聞こえていた。
「どうしたの?」
1人の園児が声をかけた。
茶色い髪に栗色の瞳、長いまつ毛の可愛い顔立ちの少年。
「あたまにね、おすながついちゃったの。」
泣いている園児は、鼻をすすりながら答えた。
黒い艶髪に白い肌、しゃがんでいて分かりにくいが、幼稚園生にしては少し高い身長で、綺麗な顔立ちの少女。
少年は泣いている少女を前にわずかに動揺したが、すぐに少女に近づきわずかに付いた砂を払った。
「これでもうだいじょうぶだよ。」
そう言って微笑み、少女の頭を撫でた。
少女は驚き、しかしすぐに笑顔になって、
「ありがとう」
と言った。
「ぼく、きょうからようちえんなんだ。」
「ゆきもきょうからようちえん!」
「ゆきちゃんっていうの?」
「うん!ゆきは、たかぎゆき!」
「ぼくはかまたともやだよ。」
「ゆき、ともやくんと、うんとね…おともだちになりた
い!」
「いいよ、おともだち!」
「あら、もうお友達ができたの?」
少女の母親が嬉しそうに顔を緩ませた。
「そうだよ、ともやくんっていうの!」
「君のお名前は、なんていうの?」
少年の父親が少女に聞いた。
急に話しかけちゃ怖がっちゃうでしょ、と少年の母親が続く。
言葉通り少女は怯えてしまったのか、自分の母親の後ろに隠れてしまった。
その後、親同士による世間話が繰り広げられたが、園児たちに理解できたのは、少年の母親が抱いている、不安そうな顔をしている子供が来年入園する、ということだけだった。
教室に少女を連れて行ってあげれば、と少年の母親が提案し、少年はそれに頷いた。
行こう、と差し伸べられた手を、少女は細い指で触り、恥ずかしそうに握る。
2人は笑いながら、教室へと走って行った。
これが、4人の最初の出会いだ。
すいません、変な口調になっちゃって…。
人から聞いた話って、話し言葉で伝えるより文章みたいにして話した方が、話しやすいじゃないですか。
ありがとうございます。じゃあ続きもこんな感じで話しますね。
そうです、女性が話していた話です。
あぁ、それは僕も引っかかって。尋ねてみると、もう1人その場にいたそうです。
少女の母親におぶられ寝ている、少女の妹が。
何度も確認しなくていいですよ、多少ちがうところはあるかもしれませんが、橋の上にいた女性が話した話です。信じられないなら向こうに直接聞けばいいじゃないですか。
まあ、無理か。