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すれ違う恋の行方〈大学編〉  作者: 秋 夕紀
第6章 梅枝七海(18歳)=立松千宙(18歳)
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§4二人にとってのキス

 しばらく3人でゲームや話をして過ごしている内に、夜中の12時を回っていた。七海は千宙を客間に案内し、一緒に布団を敷いた。

「千宙君と一緒にお布団を敷いているなんて、何か信じられないな!」

「そんなに信じられないなら、一緒に寝てみる?」という彼の軽口に、枕を思い切り投げつけた。そして、子供の頃に帰ったみたいにじゃれ合っていた。

「さっき、弟と何を話していたの?随分、楽しそうだったみたいだけど。」

「ああ、高校生って面白いね!もちろん七海の事だよ!」

「どんな事?教えないと、明日の朝食は無しだからね!」

「七海が意外と怒りっぽいとか、親に反抗して家を飛び出したとか、高2になって胸が大きくなったとか。それと、俺たちの関係も訊かれたよ!」

「ひどい!あの野郎、後で取っちめてやらないと!俺たちの関係って、何?」

「だから、どんな付き合いなのか、気になるみたいだな。高1だから、そういう事に興味津々っていう所かな。プラトニックな交際だと答えておいた。」

 私の事をネタにして、男の子同士は変な所で意気投合するものだとあきれた。自分の部屋に戻っても中々寝付かれず、千宙君の寝ている部屋に行って、

「ねぇ、もう寝たの?わたし、眠れなくて…。」とこっそりと声を掛けたが、返事がなかった。あきらめて戻ろうとすると、後ろから抱き着かれて引き戻された。

「キャッ!」と思わず声が出てしまい、彼に「シーっ!」とたしなめられた。

「びっくりしたな、もう!襲わないでって、言ったじゃない!」

「ごめん、ごめん!襲う気はないから、安心して。俺も眠れなかったんだ。」


 二人は布団に寝転(ねころ)がって話をしていると、

「中学の時の林間学校、覚えてる?男子の部屋に七海たちが遊びに来て、先生が来たと誰かが言ってベッドに潜り込んだ時。」と千宙が懐かしそうに話し出した。

「覚えているわよ!あの時、その言葉を信じて、必死で千宙君にしがみ付いてた。」

 私たちが最も接近した、過去の出来事だった。

「千宙君は、こういう時に何もして来ないよね!」と私が言うと、

「どういう意味?何かしてもいいの?」と彼は真剣に答えていた。

「前から思ってたんだけど、千宙君は自分から進んでしようとしないよね!高校の時に付き合ってたと言ってたけど、それも女の子から告白されたんじゃないの?」

「それはそうだけど、俺って、相手の事というか先の事を考え過ぎるんだよね。」

「相手の事を思いやるのは良いけど、自分の事を考えているんじゃないの?」

 私は以前から思っていた事を、正面からぶつけてみた。

「そうかもな!自分が傷つくのを恐れて、受け身になっていたのかもしれない。」

「わたしとも、そうだったよ!でも、わたしも人に流されるタイプだから、似た者同士で先へ進めなかったのかもしれない。ごめんね、千宙君が悪い訳ではないよ!」

 彼は何かを考えているみたいで、黙って天井を(あお)いでいた。そして、

「ねえ、七海が好きだ!ずっと好きだった!キスしてもいいかな?」とつぶやいた。

「やっと好きだと言ってくれた。それから、キスの同意を求めなくても良いからね!」


 七海が仰向けのまま目を閉じて待っていると、千宙は彼女に(かぶ)さるようにして唇を重ねてきた。二人にとっての初めてのキスは、今までの分を取りも戻すかのように、いつまでも続けられた。そして、抱き合ったまま朝を迎えた。

 目が覚めると、私の横に千宙君が眠っていて幸せだった。というより、私をしっかりと抱き締めていて身動きが出来なかった。離れるのが名残惜しい気がしたが、弟に知れない内にと思ってそっと起き上がり、自分の部屋に戻った。


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