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すれ違う恋の行方〈大学編〉  作者: 秋 夕紀
第8章 梅枝七海(19歳)=黄川田肇(21歳)
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§1軽率な行動

<黄川田肇(21歳)>

千里大学情報学部3年。北海道出身で、七海とはインカレのサークルで知り合う。

身長168㎝、小太りで、黒縁の眼鏡が印象的で実直な性格。

 千宙に裏切られたと思った七海は、彼からの連絡を無視して1週間が過ぎた。このままではいけないと気付いていたが、やるせない思いでいっぱいだった。

「梅枝さん、どうしたの?元気がないみたいだね。」と寮の先輩に声を掛けられた。

「実は彼氏とケンカして、最悪な気分なんです。」と言うのをきっかけに、私は経緯を説明した。千宙と再会して付き合うようになり、初体験を約束した日に裏切られた事、しかも私でない女の子の部屋に行った事、拠所ない理由があるのは理解できても簡単に許せない気持ちだと、余すことなく話した。先輩は黙って聞いていて、時折(うなづ)いたりなだめたりしてくれた。話し終わると落ち込んでいた気分はいくらか楽になり、千宙の言い訳を聞いてやろうという気になり始めていた。


 熱心に話を聞いてくれた先輩は、七海をサークルのコンパに誘った。七海は千宙に対する仕返しと、うっぷん晴らしのために誘いに乗った。一次会は居酒屋の一室に、千里大の男子8名と聖海女子大の女子6名が集った。1年生には酒を飲ますなと言いながら、七海を含めた未成年の男女4名はアルコールを口にしていた。

「七海ちゃん、今日は雰囲気が違うね!こういう時は、思い切り羽目を外そうよ!」

「いいですよ!楽しまなくちゃね、先輩!わたしを口説こうと思ってるんでしょ!」

 私は言い寄って来る男子学生にからんで、うっ積した思いを吐き出していた。そんな私の行動を、以前話をした黄川田(きかわだ)さんが離れた場所からこちらを(うかが)っていた。


 七海は飲み慣れない酒にテンションが上がり、タクシーに乗って二次会の場所へ移動していた。そこは男子学生のマンションの一室で、男子4名と女子3名が来ていた。黄川田(はじめ)は七海を心配して、行動を共にしていた。

「おい、黄川田、お前が二次会に来るのは珍しいな!気になる子でもいるのか?」

「いや、そんな事はないけど、何となく!」と言い逃れをしたが、皆にはお見通しだった。それぞれが好きな飲み物を手にし、男女入り混じっての宴会が始まった。

「七海ちゃんは、彼氏がいないの?俺で良かったら、付き合わない?」

「彼氏はいるけど、ただいまケンカ中です。先輩は彼女がいるじゃないですか!」

 私はそう言っていなしたつもりだったが、先輩に肩を抱かれて引き寄せられた。

「やめなよ、嫌がってるじゃん!」と口を挟んだのは、黄川田さんだった。

「おお、黄川田、お前やっぱり七海ちゃんが目的だったんだ。いいよ、譲るから好きにしたら!何ならベッドを使っても良いぜ!」と挑発され、「女の子はモノじゃないんだから」と彼は真剣に怒っていた。


 他の女子は男子といちゃつきながら、彼らのやり取りを白い目で見ていた。七海は黄川田に促されてその場を後にし、彼にタクシーで寮まで送ってもらった。

「何で?わたしはもっと遊んでいたかったのに。」と寮の前で、私は駄々をこねていた。彼は幼い子をなだめるように、私を支えながら頭をなでてくれた。ふと千宙の事が頭を(よぎ)ったが、彼の包容力に甘えていた。


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