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すれ違う恋の行方〈大学編〉  作者: 秋 夕紀
第7章 秋庭二奈(19歳)=立松千宙(19歳)
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§4成り行きからの関係

 二奈は大学近くのアパートを借りて引っ越し、バイトも辞めて勉強に励んだ。千宙とは今まで通りの付き合いで、彼が七海と別れた事は知らなかった。暮れに長崎に帰省し、正月に戻って来て彼を部屋へ招いた。引っ越しの手伝いと事件の時のお礼を兼ねて、水炊きを用意してもてなした。

「長崎はどうだった?元カレとは会ったの?」

「答え難い事を、直球で訊くのね。会ったわよ!よりを戻そうとかじゃないけど、会いたくなって呼び出したの。それで、懐かしくなってしちゃった!」

「しちゃった?何を?」と本気で訊く彼に、一部始終を話して聞かせた。彼は信じられないという目で、私の告白に耳を傾けていた。

「で、立松君は彼女とどうなったの?あれから、進んだの?」

「もう別れたよ!12月だけど、言ってなかったっけ!」と横を向いていた。


 二奈はどう言葉を紡いだら良いのか分からず、二人の間に沈黙が生まれていた。そして、自分のせいで別れたのではないかと思いを巡らし、千宙を問い(ただ)した。彼は正直に、その日に大事な約束をしていた事、二奈の部屋に入るのを見られて誤解された事などを打ち明けた。二奈は涙を(ぬぐ)いながら、

「ごめんなさい!わたしのせいで、そんな事になっていたなんて。」と謝った。

「君のせいではないから、気にしないで!俺がしっかりと説明しなかったからだよ。」

 私は申し訳なく思って、どう償うべきかを考えていた。

「もう駄目なの?それなのに、調子に乗って元カレの話なんかして、ホントにバカみたいだね。立松君には迷惑ばかり掛けて、どうしたら許してくれる?」

「許すも何も、君は何も悪くないよ。これは俺の問題だからね。」と言う彼の声は沈んでいた。そんな彼を慰める方法は、一つしかなかった。

「わたし、前から立松君を好きだった。彼女がいると聞いてあきらめたけど、ついつい甘えている自分がいたの。元カレとしたというのは嘘で、彼女への当て付けだったの。彼女と別れたばかりでそんな気になれないかもしれないけど、わたしと付き合ってほしい。いえ、わたしを今ここで抱いてほしい!」

 

 千宙は、二奈の思い掛けない告白にためらっていた。彼女の事は会った時から気になっていたし、こうして一緒に時を過ごすのも楽しかった。それが恋だというならば、それに違いなかった。七海との事があって一線を敷いていたが、求められて引き下がる理由が思い浮かばなかった。二人はその夜、成り行きから結ばれた。

 二人の関係はしばらく続いたが、2年生になって自然と疎遠になった。千宙は四谷のキャンパスになり、学部も違う事から会う機会がなくなった。そして、二奈には新しい恋人ができた。それは以前住んでいたアパートの隣人で、事件の時に警察に通報してくれた薬学部の先輩であった。


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